>>Topへ戻る >>「Research Lab. Report」タイトルリストへ戻る |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004年初頭より、鉛系ガラスの含浸処理ルビーが市場に現れるようになった。これらは多くのフィッシャーやフラクチャーを含んだ低品質のルビーをターゲットとし、屈折率の近似する鉛系ガラスを含浸し、その見かけのクラリティを改善している<写真-1>。 ※詳しくはジェモロジィ2004年5月号および2005年2月号または下記情報をご参照 ください。 >>鉛ガラスが含浸されたルビー(2004.03.15) >>鉛ガラスが含浸されたルビー 〜最新事情〜(2004.12.21) Gem Research Swiss Labの発表によると(http://www.swisslab.net)、2007年8月になって、ビスマス系のガラスを用いた含浸処理ルビーも急速にタイ国内に広がり、鉛ガラスと同様なクラリティ改善の効果が得られているとのことである。
2007年10月のLMHC-NewYork会議において、タイのバンコクにあるGITラボの技術顧問であるPornsawat Watanakul教授から新たな含浸処理に関する緊急報告があった。同教授によると、現在チャンタブリ地区において “Super Diffusion Tanusorn”と呼ばれているブルー・サファイアが流行しているとのことである。このブルー・サファイアはコバルト金属を混合して青色に着色した鉛系ガラスをコランダムに含浸したもので、<写真-2>“Tanusorn”はこの処理を開発した人物の名に因んでいる。
同教授らは現地の加熱業者と今回の処理手法について話し合い、以下のような現状を把握している。 非玄武岩起源であるマダガスカルやスリランカ産などの無色や褐色を帯びたギウダ原石は、加熱の前工程として色や質や内部特徴などによって選別される。この際、フィッシャーやフラクチャーあるいは双晶面などを多く含んだ低品質のコランダムは加熱による損傷を免れるため事前に取り除かれる。選られた低品質の原石は、フッ化水素、硝酸や王水などの強酸溶液を用いて原石表層に付着している不純物や有機物などが除去される。この化学クリーニングされた淡色のコランダムを粉末コバルト金属あるいは酸化コバルトを混ぜ合わせた鉛ガラスと共に加熱する。これにより、フィッシャーやフラクチャーや双晶面などに青色に着色された鉛ガラスが含浸する。 これらの新しい含浸処理サファイアは。現地で非常に低金額(1ctあたり数ドル)にて取引されているようである。 今回、Pornsawat Watanakul教授の好意により、この新しい処理サファイアを8ピース入手することができた。以下に写真とともにその特徴をご紹介する。 <一般特徴> この処理サファイアは写真-3aに示すような青色を呈するが、光ファイバーを照らすと、紫青色やピンク青色を発する(写真-3b)。 今回検査した8ピースのサイズは1.400〜2.892ctであった。透明から半透明質で、多くのフラクチャー、クラックおよび双晶面が発達している(写真-4)。
屈折率、複屈折量および比重は通常のブルー・サファイアとほぼ同じで、紫外線下では、長波・短波とも不活性であった。カラー・フィルター下ではコバルト着色の青色石に典型的な鮮やかな赤色を示した。ハンディ・タイプの分光器ではスペクトルの赤色部〜緑色部に3本の特徴的な吸収バンドが認められる。 拡大下においてコランダムに普遍的なシルク・インクルージョンや色帯などは観察されず、液体や液膜のみが見られる。多数のフラクチャーやクラックには青色〜紫青色を呈するガラス状含浸物質が容易に認められる(写真-5a,b)。フラッシュ効果は見られないが、含浸物質の反射による干渉色が観察できる(写真-6)。また、フラクチャーや双晶面に閉じ込められた気泡などもみられる。反射光による観察で、表面に達している含浸されたフラクチャー部の反射率はコランダムよりやや低い(写真-7)。
含浸の程度を確認するためX線レントゲン検査を行った。透明度の高い石にもコントラストの高い白い筋が多く見られ、これらはサファイアの表面に達しているフラクチャーや双晶面の分布に対応している(写真-8)。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|