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鉛ガラスの含浸によりクラリティの改善が行われているルビーが急速な広がりを見せている。含浸されたフラクチャーに以前は見られた特有のフラッシュ効果が、最近のものには見られないことが多い。また、スター・ルビーやビーズのネックレスなどの商品にもこの処理が見られるようになった。以下に詳細を報告する。 ジェモロジィ2004年5月号に既報の通り、ルビーに透明度を改善する目的で屈折率の近似する鉛系のガラスを含浸する処理が見られるようになった。これらは同年12月以降、急速な広がりを見せ、日本国内のみならず、海外のラボからも深刻な現状が報告されている。 既報の含浸処理はファセット・カットされたルビーにフラッシュ効果(通常の薄膜干渉とは異なる青色〜紫色の不自然な光の効果)が見られるものであった(PHOTO-1)。また、含浸されたフラクチャー部には平面状に閉じ込められた気泡なども見られた(PHOTO-2,3)。 さて、最近になって、これらの含浸処理に加えてフラクチャーにフラッシュ効果を伴わないタイプが急増してきた。PHOTO-4は鉛ガラスの含浸処理が施されたスター・ルビーである。既報のファセット・カットされたルビーは色の改善を目的とした加熱がすべてに行われていたが、これらのスター石は色改善やアステリズムの改善を目的としたいわゆる高温下での加熱の兆候は認められない。また、フラクチャーにはフラッシュ効果は見られず、わずかに平面状に残された気泡などから含浸処理の兆候が伺える(PHOTO-5)。
PHOTO-6はルビーのビーズのネックレスである。個々の石は4×3mm程度であるが、ほとんどすべてに含浸処理の痕跡が認められた。PHOTO-7はその反射光による観察で、表面に達したフラクチャーは反射率がやや低い。PHOTO-8はそのレントゲン写真である。白くコントラストの高く見える幾つもの筋は、ルビーに発達したフラクチャーの分布に対応する。レントゲン写真で均一に白く写るのは母体のルビー(Al2O3)より原子量の大きな元素の存在を意味しており、元素分析の結果、含浸された鉛ガラスに対応している。
昨年来、ルビーのクラリティ改善を目的とした鉛ガラスの含浸処理が広く見られるようになってきた。中でもフラッシュ効果を伴わないタイプは視覚的には識別が困難な場合がある。このようなケースではレントゲン検査や蛍光X線分析による確認が必要である。 |