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<分光吸収>
紫外―可視領域分光分析では、630nm、580nm、540nmに明瞭な吸収帯が認められ、450nmおよび388nmにわずかな吸収が認められる。前者の吸収帯は、コバルトに起因した吸収と思われ、Co着色のブルー・スピネルや青色ガラスのスペクトルに酷似している(図-1)。 FT-IRにより赤外領域の分光スペクトルを測定した結果、2055 cm-1付近にブロードな吸収と、2850、2923と2952 cm-1の強い吸収が認められる(図-2)。特に後者である2850、2923と2952 cm-1の吸収は、オイルなどによる吸収位置と一致するが、ラマン分光分析では、オイルの吸収が認められなかった。また、2500 cm-1 以上の波数範囲においては、波数が増加するにつれ透過率が減少していくようなスペクトルが得られた。このような特徴的な吸収は鉛ガラスで含浸処理されたルビーには見られない。
<化学組成> 蛍光X線分析の結果、表面に達しているフラクチャー部分から、母体のサファイアの主元素であるAlと微量元素であるTi、V、Cr、Fe、Ga以外にP、CoそしてPbなどが検出されている(図-3)。CrおよびFeの含有量は通常のブルー・サファイアよりも高く、これらはP、Co、Pbなどと同様に外部由来によるものと思われる。さらに軽元素や微量元素を高精度で検出するためLA-ICP-MS分析を行った。表面に達した青色に着色した部位を分析したところ、蛍光X線分析で検出されたP、CoとPb以外に、含有量の高い順にSi、Na、Ca、K、Fe、B、Ti、Li、Cr、Zn、Ba、Ni、Cu、Zr、La、Ce、Sr、Mg、V、Mn、Moなどの元素が検出された。これらの元素のうち、Si、Na、Ca、K、BおよびLiは含浸処理ルビーのフラクチャー部からも検出されているが、P、Mg、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Sr、Zr、Mo、Ba、La、Ceは今回の“Super Diffusion Tanusorn”と呼ばれているブルー・サファイアに新たに検出されている。
これらの元素は、一般的なコランダムの加熱に使用される添加剤―フラックス(Sodium tetraborate, Lithium metaborate, Sodium di-hydrogen phosphate etc.)起源の元素に類似するが、明確な起源は不明である。 <鑑別書上の表記> LMHCでは、2007年10月のNew York会議においてこの新しい処理サファイアの表記方法について直ちに検討され、これまでの含浸処理ルビーでの表記に加えて着色処理の項目も併記することが確認された。 |
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