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今月の鑑別室から 2003.6.25
“Evergreen”ダイヤモンド
<“Evergreen” Diamond>
技術研究室  北脇 裕士
 最近、“Evergreen”と刻印されている石を検査する機会があった。調査の結果、これらはGE社によってHPHT処理が施され、ベルギーのPOCL社を通じて販売されたものであることがわかった。
We recently had a chance to examine stones inscribed with “Evergreen”. After our investigation, those were proved to be HPHT-treated by GE and sold through POCL in Belgium.

1999年3月、LKIの発表以降、ダイヤモンドのHPHT処理が世界的な関心ごとになっている(“GE POLダイヤモンド”:ジェモロジィ1999年12月号参照)。
当初、GE POLは
II型のブラウンを無色化したものであったが、一部はピンクやブルーになることが知られるようになり(ジェモロジィ2001年12月号)、その後T型のブラウンをイエロー〜グリーンまたはオレンジに変色させるものが出現した(ジェモロジィ2002年5月号)。
今回、ご紹介するのは“Evergreen”の刻印が施された(Photo-1)イエロー〜グリーンのダイヤモンドである。これまで分析に供したこの種のダイヤモンドの総計はおよそ50pcsで、数社のクライアントからグレーディング依頼でもち込まれたものである。サイズは0.1ct〜0.7ctでカラーはFancy Intense Yellow〜 Yellowish Greenであった(Photo-2)(注:現在、HPHT処理された色についてはグレーディング・レポートのカラー・グレード欄に: 高温高圧プロセス、備考欄には:色の変化を目的とした高温高圧プロセスが行われていますのコメントが付記されています)。

すべてのサンプルは紫外線下で長波・短波とも青白色蛍光をベースに黄色〜緑黄色の蛍光がオーバー・ラップしていた。拡大下ではいくつかのものにグラファイト化の痕跡が認められた。また、紫外線下で黄色蛍光の強いものにはボディ・カラーと同様の黄色のグレイニングが認められ、強いファイバー光でH3による緑色の可視蛍光が見られた。紫外−可視領域の分光分析では黄色蛍光の強いものほどH3センタによる深い吸収が青色領域に見られ、これが黄色のボディ・カラーを生み出している。さらにH2センタの吸収が近赤外領域から可視領域に伸びたものはボディ・カラーに緑味を与える。H2センタが強く、緑味のあるものはより高温で処理されたと考えられる。FTIRによる分析では緑色の可視蛍光の強いものはIaA<IaBでB2センタの強い傾向があり、弱いものはIaAがメインでB2センタが弱い傾向があった。514nmレーザーによる低温下でのフォト・ルミネッセンス分析ではすべてに強い637センタが検出された。
これらの分析結果から、“Evergreen”と刻印されている石はNovaプロセスと類似のHPHT処理が施されたものであると考えられる。さらに、クライアントおよびGE社からの情報によると、これらはGE社によって処理されたものがベルギーのPOCL社を通じて販売されているものであるらしい。また、イエロー〜グリーンの色のバリエーションはある程度処理の技術で制御可能であるが、本来の石の性質に負う所が大きいとのことである。



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