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今月の鑑別室から 2002.03.25
HPHT処理によるイエロー〜グリーン・ダイヤモンド
<HPHT-Treated Yellow-Green Diamonds>
技術研究室  北脇 裕士
 最近、“Apple Green Diamond”(アップル・グリーン・ダイヤモンド)としてプロモートされている石を検査する機会があった。分析の結果、これらはNovaプロセスと同様のHPHT処理が施されたものであることがわかった。
We have recently inspected stones which have been promoted as "Apple Green Diamonds". Our
analysis revealed that the stones were HPHT-treated in a similar way to the Nova process.

1999年3月、LKIの発表以降、ダイヤモンドのHPHT処理が世界的な関心ごとになっている(“GE POLダイヤモンド”:ジェモロジー1999年12月号参照)。
ひと口にHPHT処理といってもいくつかのタイプが知られており、実験室レベルのものから日常の鑑別業務でしばしば見かけるものまで存在する(“ダイヤモンドにおけるHPHT処理の現状:ジェモロジー2000年9月号参照)。
今回、ご紹介するのは“Apple Green Diamond”(アップル・グリーン・ダイヤモンド)という名称でプロモートされているイエロー〜グリーンのダイヤモンドである。
分析したダイヤモンドの総数は10pc(8pcは鑑別に持ち込まれたもので、残りの 2pcはGems Clasique Co.より研究用に貸与されたものである)。サイズは0.4ct〜0.7ct(1ct以上もあるらしい)、カラーはFancy Intense Greenish Yellow〜 Yellowish Greenであった(PHOTO-1)。(注:現在、処理石に対してカラー・グレーディングは行っていない)。これらの色は一部の放射線処理石と異なり、かなりの高温まで安定である(プロモーションによると2000℃以上まで安定)。
すべてのサンプルは紫外線下で長波・短波とも黄色〜緑黄色の蛍光を発した。拡大下ではほとんどのものにグラファイト化の痕跡が認められた(PHOTO-2)
また、すべてにボディ・カラーと同様の黄色のグレイニングが認められ、強いファイバー光でH3による緑色の可視蛍光が見られた。ガードルにはいかなる刻印も認められなかった。
紫外−可視領域の分光分析ではH3センタによる深い吸収が青色領域に見られ、これが黄色のボディ・カラーを生み出している。さらにH2センタの吸収が近赤外領域から可視領域に伸びたものはボディ・カラーに緑味を与える(PHOTO-3)。H2センタが強く、緑味のあるものはより高温で処理されたと考えられる。FTIRによる分析ではほとんどが
IaA<IaBであった。514nmレーザーによる低温下でのフォト・ルミネッセンス分析ではすべてに575センタが検出され、一部に637センタも検出された。
以上の分析結果から、処理に供される原材は
Iaタイプのブラウン・カラーで処理工程はNovaプロセスとほぼ同様と思われる(“Novaダイヤモンド”: ジェモロジー2000年4月号参照:※Novaダイヤモンド社はHPHT処理ダイヤモンドの生産を中止したらしい。)現在、Novaプロセスの処理を行っているのはGE社他米国の数社、ロシア、中国などがあり、今後、HPHT処理されたイエロー〜グリーンのダイヤモンドが宝石市場においてより身近なものとなるであろう。
これらのHPHT処理されたダイヤモンドは、ソーティング・メモには“HPHTプロセス”、グレーディング・レポートには“高温高圧処理による色の改変を認む()”とのコメントを表記しています。

※:2002年7月24日より“HPHTプロセスによる色の改変を認む”との表記に変更となりました。


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