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今月の鑑別室から 2001.11.09
HPHT処理によるピンク・ダイヤモンド
技術研究室  北脇 裕士
最近、HPHT処理によるピンク・ダイヤモンドが話題になっている。これらは低温下でのフォトルミネッセンス分析により識別することが可能である。
Pink diamonds that were treated by HPHT process have become a recent popular topic. These stones can be identified by photoluminescence analysis under low temperature.

宝石学関連の学会誌や情報誌において、HPHT処理に関する記事を目にする機会が多い。それだけこの処理に対する関心の高さがうかがえる。その中において、HPHT処理によってピンクやブルーに変化した事例について報告されているものがある。今年(2001年10月)のIGC(国際宝石学会)でもこの件に対して1例報告がなされており注目を集めた。これらの報告によると、GE社ではこれまで行ってきたII型のブラウンを無色化するHPHT処理の過程において、副産物的(処理前に予測はできないらしい)にピンク(IIa)とブルー(IIb)を得ている。その正確な量などについては公表されていないが(無色に比べるとごくわずかと思われる)、今後市場に供給される可能性がある。また、ロシアの宝石学術誌においてもHPHT処理によるピンク・ダイヤモンドについての報告があり、同様に市場供給される可能性を十分に秘めている。
PHOTO-1は全宝協技術研究室と物質材料研究機構(当時無機材質研究所)の神田久生博士との共同研究で行っているHPHT処理による実験(2000年5月)で得られたピンク・ダイヤモンド(FANCY LIGHT PINK)である。処理前は1.750ct 、SI2、VERRY LIGHT BROWNであった(PHOTO-2の中央石)。処理後はリポリッシュのため1.715ctになったが、クラリティに変化はなかった。一般的な宝石学的検査においては典型的なIIaの天然ダイヤモンドの特徴を示し、HPHT処理のダイヤモンドに期待されるグラファイト化などの内部特徴は見出されなかった。また紫外および赤外領域の分光分析においてもII型の特徴を示し、HPHT処理の痕跡は検出できない。しかし、-150℃の低温下におけるフォトルミネッセンス分析においては、当研究室でこれまでに分析したII型の未処理の天然ダイヤモンドとの相違を見出すことができた。今後さらなる研究が必要であるが、HPHT処理によるピンク・ダイヤモンドの識別には、無色のGE POL(現在Bellataireと呼ばれる)と同様に低温下でのフォトルミネッセンス分析が最も有効な手法となることが再確認された。


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