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◇ルミネッセンス・イメージ
 0.1ct程度以上の13ピースと0.1ct未満の13ピースの総計26ピースについてCL(カソード・ルミネッセンス)像を観察した。併せてDTC製のDiamondViewTM を用いたUV ルミネッセンス像の観察も行った。48ピースすべてについてDTC製のDiamondViewTM を用いたUV・ルミネッセンス像の観察を行った。さらに0.1ct程度以上の13ピースと0.1ct未満の13ピースの総計26ピースについては、CL(カソード・ルミネッセンス)像の観察を行った。DiamondViewTMはCL法の電子線の代わりに波長の短い紫外線(<230nm)を用いたもので操作性に優れており、CLの予備的観察に極めて有効である。
 DiamondViewTM では、48ピースのうち7ピースにのみ直線状の平行積層成長構造のイメージが観察されたが、CL法では観察した26ピースのうち15ピースに同様のイメージが確認された(図-15a、b、c)。このような成長構造のイメージは、CVD成長過程において非常に均一な成長速度が保たれたことを示している。また、観察したすべてのサンプルにおいて、UVおよびCL双方とも575nmセンタによる極めて鮮やかなオレンジ色の蛍光色を示した。
 天然ピンク・ダイヤモンドのほとんどは青色の蛍光色で、八面体面に平行な成長模様や六面体面と八面体面の成長分域が共存するMixed-habit Growth模様が観察される。(図-16)。天然ダイヤモンドにも極めて稀に575nmセンタによるオレンジ色の発光を示すものもあるが、CVD合成ダイヤモンドには見られないモザイク状のパターンが観察される(図-17)。照射処理が施されたピンク・ダイヤモンドでは、同様に575nmセンタに因るオレンジ色蛍光を発するが、天然ダイヤモンドが原材料のものは交差する線状模様(H3に由来)が観察され(図-18)、HPHT合成ダイヤモンドでは特有のセクター・ゾーニングが観察される(図-19)

図-15a,b,c:
CVD合成ピンク・ダイヤモンドに観察された特有の積層構造に由来するCL像。

◆結論
 メレサイズのCVD合成ピンク・ダイヤモンドの宝石学的研究を行った。これらは575nm(N-V0)センタに因る鮮やかなオレンジ色の紫外線蛍光においてアーガイル鉱山産などのほとんどの天然ピンク・ダイヤモンドと識別が容易である。照射処理とアニールでピンク色に改変されたダイヤモンド(原材料は天然あるいはHPHT合成)も同様にオレンジ色の紫外線蛍光を発し、これらとはそれぞれのCL像の比較が識別に有効である。また、PLスペクトルでは633nmレーザーにおいてSi関連の737nmピークが検出され、CVD合成ダイヤモンドの重要な指標となる。
 CVD合成ダイヤモンドの宝飾品への利用は始まったばかりであり、今のところ生産は限定的であるが、CVD合成ダイヤモンドの幅広い工学的応用の可能性がある現在、さらなる技術開発が予想される。本稿で述べた識別特徴は、現時点の製品に対するものであり、宝石鑑別ラボはこのような新しい素材に対する鑑別技術の開発に常に努力を払わなければならない。

図-16:
天然ピンク・ダイヤモンドに観察される六面体面と八面体面の成長分域が共存するMixed-habit GrowthのCL像。
図-17:
天然のタイプIIaダイヤモンドのCL像に稀に見られるN-Vセンタによるオレンジ色の発光とモザイク状模様。
図-18:
放射線照射処理されたピンク色の天然ダイヤモンドのCL像に見られる交差する線状模様。
図-1:
HPHT合成ピンク・ダイヤモンドのCL像に見られる明瞭なセクター・ゾーニング。

◆文献
Deljanin B., Hainschwang T., Fritsch E. (2003) Update on study of CVD diamonds. Jewellery News Asia, No.231, November 2003, pp. 134-139.
Priddy S. (2003) Apollo Diamond to release CVD diamonds in Q4. Rapaport News,<date accessed:04/13/04>.
Martineau P. M., Lawson S.C, Taylor A.J., Quinn S.J., Evans D.J.F., Crowder M.J. (2004) Identification of synthetic diamond grown using chemical vapor deposition (CVD). Gems & Gemology, vol.40, no.1, pp.2-25.
Wang W., Moses T., Linares R., Shigley J.E., Hall M., Butler J.E. (2003) Gem-quality synthetic diamonds grown by a chemical vapour deposition (CVD) method. Gems & Gemology, vol.39, no.4, pp.268-283.
Wang W., Hall M.S., Moe K.S., Tower J., Moses T.M.(2007) Latest -generation CVD-grown synthetic diamonds from Apollo Diamond inc. Gems & Gemology, vol.43, no.4,pp.294-312
Wang W. (2009) ”CVD-Grown Pink Diamond.” GIA News from Research
http://www.gia.edu/research-resources/news-from-research/treated_pink_CVD_06.24.09.pdf
Zaitsev A.M. (2001) Optical properties of diamond. Springer-Verlag, Berlin, 502 pp.
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