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◆結果
一般鑑別検査
◇外観および拡大特徴

 米国、中国産とベトナム産の淡水産二枚貝のドブガイ核および中国産ヒレイケチョウガイ核はほとんど白色を呈し、核の表面からいわゆる“ギラ"現象が認められた。宝石顕微鏡による拡大検査では、貝殻特有の淡褐色の平行層状成長線が認められた(図-3)。日本産の色付き不良核と分類されているドブガイ核と中国産ドブガイ張り合わせ核(中国製)に濃褐色の成長線が見られた。また、張り合わせ核は5枚の色付き貝のスライスで張り合わせられている。一方、海水産二枚貝から成形された中国産シャコ核は同様な白色で、層状成長線はほとんど見られず、交差板構造を呈している(図-4)。シャコ核には“ギラ"現象は認められなかった。海水産のシロチョウガイ核に、ほぼ平行な層状成長線が見られ、インド産巻貝のブラウン・シェル核は全体的に黄色または褐色を呈しており、明瞭な彎曲状成長線が認められた(図-5)。蛍光増白剤による処理が施されたドブガイ核とロンガリット処理が施されたヒレイケチョウガイ核には色付きの成長層やしみ・不純物などは認められず、純白色であった。貝以外の材質から作られたバイロナイト核とセラミックス核は白色であり、組織は微細粒状構造を示し、上述の貝殻核の構造とは異なっていた。

図-2:
ドブガイやヒレイケチョウガイ(淡水産二枚貝)から成形された核は平行層状成長線を呈する。
図-3:
中国産シャコ(海水産二枚貝)から成形された核は交差板構造を呈する。
図-4:
インド産ブラウン・シェル(海水産巻貝)から成形された核は彎曲状成長線を呈する。

◇紫外線蛍光検査
 紫外線蛍光検査では、各国産ドブガイ核及びヒレイケチョウガイ核は長波および短波紫外線下において青白色〜弱い青白色蛍光を示した(表-1)。一方、蛍光増白剤による処理核は長波紫外線下において非常に強い青白色蛍光を示し、ロンガリット処理核は特徴的な白濁蛍光を示した。シャコ核は長波紫外線において黄白色蛍光を発し、短波下では強い白色であった。シャコ核、シロチョウガイ核およびブラウン・シェル核は長波紫外線において黄濁色蛍光、短波下では白濁蛍光を示したが、シャコ核の蛍光強度はやや強かった。貝以外の材質であるバイロナイトは長波紫外線下では弱青白色に、短波では不活性であった。セラミックス核の蛍光反応はなかった。

◇比重測定
 静水重量法による比重測定はそれぞれ2回測定し、測定値に誤差が見られた場合は3回目を測定し、3回の平均値とした。各国産未処理又は化学処理したドブガイ核から2.80-2.83の値が測定され、ドブガイ張り合わせ核はこれより明らかに低い2.69を示した。中国産ヒレイケチョウガイ核は各国産ドブガイ核よりやや低い値2.76を示した。この二種類の淡水産二枚貝核は比重測定から識別が出来そうである。一方、海水産シャコ核は2.85-2.86と、淡水産二枚貝のドブガイ核より高い比重を示した。シロチョウガイ核およびブラウン・シェル核は、2.77-2.78の範囲にあり、淡水産二枚貝のヒレイケチョウガイ核に近似する。貝以外の材質であるバイロナイト核からはシャコ核と同様な高い比重値2.86が測定されたが、セラミックス核は2.56と低い値を示した。

ラボラトリーの技術
◇紫外-可視領域分光分析

 紫外-可視領域の分光反射測定の結果、淡水産二枚貝核と海水産二枚貝核には共通して282-285と225-230nm付近にブロードな吸収が認められた(図-6)。この吸収はコンキオリン蛋白および有機物質起源の色素による吸収と考えられ、核の褐色味が強い程、吸収が深くなる。蛍光増白剤による処理とロンガリット処理が施されたドブガイ核では、282-285nm付近の吸収はやや小さくなっている。貝以外の材質を使用したバイロナイト核には上述した淡水産と海水産核に近似する吸収が278と227nm付近に検出され、セラミックスにはこのような吸収は認められず、250nm付近にブロードな吸収が認められた。

◇赤外領域分光分析
 赤外領域の分光分析の結果、すべての淡水産二枚貝核と海水産二枚貝核にはアラゴナイト型のCaCO3 (炭酸カルシウム)によるピークが、698、712、872、1079、1510(ブロード)、1776cm-1に検出された(図-7)。さらに、色付きのドブガイ核やシロチョウガイ核およびブラウン・シェル核には945と1138cm-1にピークが検出され、これらは有機質由来の可能性が高い。貝以外の材質であるバイロナイト核には、726、893、954、1138、1429、1560、1804、2100、2230および2293cm-1のピークが検出され、これらは炭酸塩由来と考えられる。セラミックス核には470、687、798、955、987、1024、1133および1420cm-1の特徴的なピークが検出された。

図-6:
淡水産二枚貝核、海水産二枚貝と巻貝核、貝以外の材質の紫外-可視領域の分光反射測定結果。
図-7:
淡水産二枚貝核、海水産二枚貝と巻貝核、貝以外の材質の赤外領域の分光分析結果。

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