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■レントゲン検査
 ダイヤモンドと類似石の識別にはX線透過性レントゲン(X線透過性レントゲン)検査が有効である。特に多数個がセッティングされているジュエリーには、まとめて検査できる上に写真撮影を行うことで、ジュエリーのどの石が類似石かを記録することが可能である。モアッサナイトは炭化珪素で化学式がSiCである。したがって、レントゲン検査においては他の原子量の大きな元素を含有する類似石(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)やCZなど等)よりもX線の透過性がダイヤモンドに近い。しかしながら、写真-8―に示すようにダイヤモンドとの透過性に識別可能な相違が認められる(写真-8a,b)。

写真-8a,b:
徴黒色のモアッサナイトとダイヤモンドが混在したジュエリー(左)とそのレントゲン像(右)。矢印部がモアッサナイト

モアッサナイト・テスター
 今回、当ラボで行った限りにおいては、ダイヤモンドと類似石を判別するサーマルテスターやモアッサナイトを判別する簡易器具では、高温加熱処理されたブラック・ダイヤモンドとブラック・モアッサナイトを明確に識別することはできなかった。
蛍光X線分析
 蛍光X線分析において、含有する元素を分析することでダイヤモンドと類似石を明確に識別することが可能である。ダイヤモンドの主元素はC(炭素)であるが、他の類似石はそれぞれ異なる元素が検出される。モアッサナイトはSi珪素(珪素Si)とC炭素(C)で構成されており、元素分析においてはダイヤモンドに検出されないSi珪素(Si)が検出される。
顕微ラマン分光分析
 標準的な鑑別検査において、“ブラック・ダイヤモンド”のジュエリーからモアッサナイトの疑いのある石を分別することは可能である。しかしながら、疑いのあった個々の石の同定には顕微ラマン分光分析が有効である。ラマン分光分析はラマン効果(単色光を物質に当てて散乱させる時、散乱光のうちに、その物質に特有な量だけ波長が変わった光が混ざってくる現象)を利用して物質の同定や分子構造を解析する手法で、数ミクロン程度の試料や局所分析にきわめて有効である。ジュエリーにセッティングされたものでも個々の分析を短時間で行うことができ、図-1に示すようにダイヤモンド、モアッサナイト、CZなど等を明確に同定することが可能である。

図-1:
顕微ラマン分光分析。赤色-ダイヤモンド、青色-CZ、緑色-モアッサナイト

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