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◆パライバ州◆
(バターリャ鉱山)
 バターリャ鉱山はパレリアスから直線距離でおよそ50km。鉱山の近くは未舗装道路で、乾季は良いが、雨季に雨が集中すると風化した土がぬかるんで車での走行が困難になるらしい。鉱山にもっとも近い街は人口が数百人程度のバターリャで、教会を中心に美しい町並みが広がる。
 この地はパライバ・トルマリンが最初に発見された場所である。このトルマリン発見のきっかけは1982年に遡る。資料によると、ブラジルの地質調査所がマンガノタンタライトを採掘していたこの地区において、およそ13人の鉱夫を引き連れたエイトー氏によってトルマリンが発見された。数年後の1987年の夏には、同氏によって風化したペグマタイト鉱脈から彩度の高いブルーのトルマリンが発見された。引き続き数キログラムの宝石品質のグリーン・トルマリンが採掘され、数百ctがカットされた。このCu(銅)イオンで着色したブルー〜グリーンのトルマリンは、1988年にはブラジルの宝石市場で初めて売買され、1989年のツーソン・ジェム・ショーに出品されて一躍世界的に有名となる。1990〜91年にかけてパライバ・トルマリンの生産はピークを迎えるが、その後所有権の係争問題で生産が限定されていた。現在はエイトー氏、ハニアリー氏、ジョンヒッキー氏がこの地の鉱区を3分割して所有し活発に操業している。各鉱区ではそれぞれ10人、30人、50人程度のスタッフが働いている。
 この地のペグマタイトもアルバイトが主体の長石、石英、白雲母、および、トルマリンで構成されている。リオ グランデ ド ノルテ州の2つの鉱山に比べて長石の大部分は白いカオリンと呼ばれる柔らかい粘土に変質している。この鉱区にはペグマタイトの脈が少なくとも6つ確認されており、それぞれに番号が付けられ“ライン”と呼ばれている。エイトー氏が最初に発見し、操業していたのはライン1および2に相当する。
 大部分のペグマタイトはカオリナイト化が進んでいるため坑道の切刃では手掘り作業が行われているが、一部で電動工具や発破も用いられている。掘り起こした土砂の運搬にはブルドーザー等の重機も使用されている。
写真-25: パライバ州バターリャ鉱山へ続く未舗装道路
写真-26: 教会の美しいバターリャの街並み
写真-27: バターリャの街全景
写真-28: バターリャ鉱山のパライバ・トルマリン/左から8.65,14.99,3.35ct/協力:ヌールジェムジャパン(有)/撮影:小林正明
写真-29: バターリャ鉱山全景。写真左端の小高い丘で最初のパライバ・トルマリンが発見されてた。写真手前側からハニアリー氏、エイト−氏、ジョンヒッキ−氏の鉱区。それぞれの境界には柵が設けられている
写真-30: ハニアリー氏の鉱区入り口
写真-31: ハニアリー氏の鉱区での試掘
写真-32: ハニアリー氏の鉱区での最近の坑道。外部からの侵入を防ぐためのコンクリート壁が設けられている
写真-33: ハニアリー氏の鉱区の縦坑
写真-34: ハニアリー氏の鉱区の横坑
写真-35: ハニアリー氏の鉱区で見つかったパライバ・トルマリンの鉱石
写真-36: エイトー氏の鉱区入り口
写真-37: エイトー氏の鉱区での作業風景
写真-38: ジョンヒッキ−氏の鉱区での重機を用いた作業風景
写真-39: ジョンヒッキ−氏の鉱区での選鉱風景
写真-40: ジョンヒッキ−氏の鉱区の縦坑入り口
写真-41: ジョンヒッキ−氏夫人。もともと彼女の父親がこの地に広大な土地を所有していた
写真-42: ジョンヒッキ−氏の鉱区での基盤の片岩とペグマタイトとの境界
写真-43: ジョンヒッキ−氏の鉱区で見つかったパライバ・トルマリン

◆まとめ◆
 ブラジル、パライバ州のバターリャ鉱山と近接するリオ グランデ ド ノルテ州のムルング鉱山およびキントス鉱山を訪れた。各鉱山ではそれぞれ数10名のスタッフを抱え、今なお活発に採掘が行われている。ムルング鉱山はこれらの鉱山の中で現在最も産出量は多いが、そのほとんどが小粒石である。キントス鉱山ではここ1年産出は限定されているが、組織的に採掘されている。バターリャ鉱山では3つの鉱区で競うように操業されており、新しい坑道の開発も積極的に行われている。各鉱山における総生産量は日本国内のパライバ・トルイマリン需要の大半を満たしていると考えられる。

謝辞:今回の鉱山視察においてグロリアス・ジェムス(有)の酒巻英樹氏、ヌールジェムジャパン(有)のザヒール. A. アンサリ氏にはその機会を与えていただいたことを感謝します。また、各鉱山の関係者の方々には採鉱に関する情報を与えていただきました。さらにムルング鉱山のデイロ氏、キントス鉱山のピーター氏、バターリャ鉱山のハニアリー氏には貴重なサンプルを提供していただきました。ここに記して深謝いたします。
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