◇CL及びSEM-CL観察:
図-7は試料AのルミノスコープによるCL像で、オレンジとグリーンのルミネッセンスが見られる。六面体の成長領域はIbタイプの要素が強くN-Vセンタによる赤みとオレンジ色の蛍光を発し、八面体の成長分域ではIaAの要素が強くH3センタによる緑黄色蛍光を発している。ルミネッセンスの発光色の差によってセンター・クロスの成長分域の境界が明瞭に認められる。
図-8aは同じ試料の同じ位置でのSEM−CL像である。ルミノスコープでは可視蛍光を発光色として視覚的に捕らえることができるが、SEM−CLではルミネッセンスの強弱によって黒白のコントラストのみが観察できる。明るい帯は不純物の窒素と関連した欠陥の高濃度、暗い帯は低濃度に対応している。写真の白い部分は発光量の多いところで、ルミネスコープによるCL像の緑黄色蛍光の六面体成長分域に相当し、黒い部分は発光量の少ない赤みとオレンジ色蛍光の八面体成長分域に対応している。
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図-7: |
ルミネスコープで観察された試料AのCL像 |
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図-8a: |
500nm発光スペクトルによる試料AのSEM-CL像 |
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カソード・ルネッセンス分光分析において、白い発光領域はH3センタ(503nm)、黒い発光領域はN-Vセンタ(575nm,637nm)に対応することが確認できた(図-9a,b)。図-8aに見られる成長分域を500nmと600nmの異なる発光スペクトルで見た拡大CL像を図-8b,c,d,eに示す。図-8b,cは500nmの発光スペクトルによるCL像である。結晶中心部は不明瞭であるが、白い発光領域はスムーズな{111}のみからなる平面によって成長し、分域境界部は曲面で囲まれている。また、発光の明暗による直線状累帯構造が明らかである。
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図-8b,c: |
強く発光しているスムーズな{111}面成長領域の累体構造(発光スペクトル500nm) |
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これに対して、600nmの発光スペクトルである図-8d,eのCL像は非常に複雑で細いジグザグ状の{111}面のステップの繰り返しや曲面状のラフな{100}面で構成されている。また、{100}成長分域の中に直線的な{111}面の組み合わせが観察できる。このような累帯構造から、このダイヤモンドは成長過程で{100}と{111}で囲まれた六八面体を維持していたことが分かり、過飽和度の変動により、{100}面の成長速度が{111}面の成長速度より相対的に遅れ、界面の形態が不安定となり、ジグザグ状や曲面状のモルフォロジーを伴ったMixed habit growthが生じたことを示している。
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図-8d,e: |
ラフな{100}面の成長領域は曲面状やジグザグ状の特徴を持ち,結晶全体はmixed habit growthを生じている。 |
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図-9(a,b): |
走査型電子顕微鏡に装着した分光分析器による試料AとBの発光スペクトル |
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試料BのCL像とSEM-CL像を図-10、11aに示す。全体を通して累帯構造はすべてシャープな直線で構成されており、{111}面と{100}面の組み合わせからなるものの、試料Aとはまったく異なったセンター・クロス成長形を示している。また{111}面と{100}面以外に{110}やその他のマイナーな成長分域も見られる。また、図-11bの拡大SEM-CL像では、{111}と{100}の成長面は常にスムーズな結晶面であることが分かり、成長過程で成長条件に大きな変化がなく、両面上に渦巻き成長機構が発生していることを示し、このようなセンター・クロスダイヤモンドの成長は過飽和度が高い条件下で成長したことを示唆している(Tolansky and Sunagawa. 1959)。
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図-11a: |
試料BのSEM-CL像(発光スペクトル500nm) |
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図-11b: |
{111}と{100}の成長面は共にスムーズな結晶面を表す。 |
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