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新鉱物「アルミノ杉石」発見!

新鉱物「アルミノ杉石」発見!

永嶌真理子准教授らのグループがイタリアのCerchiara鉱山から新鉱物「アルミノ杉石」を発見!

概要

創成科学研究科地球科学分野の永嶌真理子准教授,株式会社Rigakuの松本 崇博士,ジェムリサーチジャパン株式会社の福田千紘氏,今岡照喜名誉教授,イタリアAssociazione Micro-mineralogica Italiana のGianluca Odicino氏,Gianluca Armellino氏 のグループがイタリアのCerchiara鉱山から新鉱物を発見しました。

国際鉱物学連合(International Mineralogical Association)の新鉱物・命名・分類委員会(Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification)の審査によって新鉱物であることが2019年4月8日に正式に承認され「アルミノ杉石」(IMA No. 2018-142)と命名されました。 この新鉱物発見は5月27日にIMA Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification (CNMNC) NEWSLETTER 49に掲載され,今後European Journal of Mineralogyなどの国際誌にも概要が掲載されます。

理想式はKNa2Al2Li3Si12O30で,紫色のとてもきれいな鉱物(写真1)で,理学部の地球科学標本室で見ることができます。 「アルミノ杉石」は,1976年に村上允英(山口大学名誉教授)によって愛媛県岩城島から発見された「杉石」KNa2Fe3+2Li3Si12O30の亜種で,アルミノ杉石の名称は,アルミニウム置換体なので,接頭語としてアルミノを追加したものです。 「杉石」は村上允英の恩師である杉健一 (九州大学教授)から命名されました。


写真1 アルミノ杉石(写真の横幅は約0.45 mm)

  写真2は岩城島と南アフリカ産の杉石です。 ある学生が岩城島の杉石と南アフリカ産の杉石を見比べて「一緒の鉱物なのにこんなに色が違うんですか!」と驚いていました。 同じ杉石でも,鉱物の色は全くちがいます。南アフリカ産のものは紫色でカボッション・カットされ,宝石としても知られています。 一方,杉石の原産地である岩城島の杉石は萌黄色です。 両者は化学組成もちがい,南アフリカ産のものはマンガンに富みますが,岩城島の杉石はマンガンをほとんど含みません。 今回のアルミノ杉石もマンガンを最大4.4wt.%も含み,きれいな紫色です。

写真2(左)愛媛県岩城島アルビタイト中に「杉石」(緑色)と「村上石」(無色透明の繊維状~柱状結晶集合)は隣り合って産する。 (写真の横幅は約3.5 mm)(右)南アフリカ産杉石(紫色)(写真の横幅は約8mm)

永嶌准教授と7つの新鉱物 

これで永嶌准教授が関わった新鉱物の発見はなんと7つ目で,それらは,村上石(2016年),Perettiite-(Y) (2014年),ランタンフェリアンドロス石 (2013年) ,ランタンフェリ赤坂石 (2013年),ランタンバナジウム褐簾石 (2012年),田野畑石 Tanohataite (2007年) です。 そのうち,永嶌准教授が筆頭著者となった論文は4編です。 これらの新鉱物は珪酸塩鉱物ですが,多くの鉱物学者は,多くの研究者が地球表層で普通に目にしている珪酸塩鉱物の中から,新鉱物を発見することはむずかしいと考えています。 その中で新鉱物を見出した永嶌准教授の慧眼には驚くばかりです。 そのように紹介すると,新鉱物の発見を目的としている「新鉱物ハンター」のように受け取られるかもしれませんが,それは全く違います。 永嶌准教授はいくつかの鉱物グループを研究されてきていますが,その線的あるいは面的に連続した系統的な研究の途上で遭遇し,発見に至ったものです。 したがって,ただの点的研究の累積(それでも立派ですが)ではなく,精緻な研究を深める中で出会い,結果的に新鉱物として識別してしまった鉱物ということになります。 したがって,新鉱物の発見は,研究の一里塚にしかすぎないのです。 何故,アルミノ杉石がその鉱山にあるのか?

  どうしてできるのか? 

理学部に集う多くの方がそうであるように,起源や成因が問題で,物事のことわりが知りたくなります。 今回の発見は岩城島のリチウムの挙動に着目した杉石や村上石などの研究が出発点であり,すでに永嶌准教授の視点はそれらの問題解明に向けられています。 今回の「アルミノ杉石」はミラー石族鉱物に属します。 図1はミラー石族鉱物の原子配列を示した結晶構造図です。 永嶌准教授の最近の総括によれば,ミラー石族の鉱物は,今回の「アルミノ杉石」を含めて24種類になりますが,その中には日本人研究者によるものが3種類あり,その中に村上允英先生によって発見された「杉石」も含まれます。 したがって24種類中2種類の新鉱物が山口大学で発見されたことになります。 ちなみにミラー石族に属する鉱物は基本的に全て図1に示す同じ原子配列を持ちますが,それぞれが形成された環境の違いを反映して様々な化学的特徴を示します。 その組み合わせが現在までに24種発見されているということです。


図1 「アルミノ杉石」が属するミラー石族鉱物の原子配列を示した結晶構造図。(Momma and Izumi, 2011を用いて作図)

今後の展開 今回の「アルミノ杉石」の杉石の発見によって,このマンガン鉱床から新たなマンガン鉱物,リチウム鉱物が見出されたことになります。 この鉱物には,マンガンのほかにリチウムが多く含まれるので,リチウム資源としても注目されることになるでしょう。 永嶌准教授は「今後は,生成条件などの詳細を明らかにしていきたい」と抱負を語っています。




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