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ジェムリサーチジャパン株式会社は、宝石・宝飾品の鑑別・グレーディングを主業務とする会社です。

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南極大陸セールロンダーネ山地産アマゾナイトと他の産地との識別

 〜平成25年度宝石学会(日本)講演会 一般講演より 2013年6月15日 於埼玉県立自然の博物館講堂 〜

ジェムリサーチジャパン株式会社 福田 千紘 宮ア 智彦

島根大学総合理工学部地球資源環境学科 亀井 淳志 赤坂 正秀

 

 2013年6月15日(土)に埼玉県立自然の博物館講堂において平成25年度宝石学会(日本)講演会・総会が開催され当社からも1件の一般講演を行いました。当日の講演では豊富な写真や詳細な数値データを交えた内容でしたが紙面の都合上講演内容を以下にごく簡単に要約し報告といたします。


2012年には南極大陸セールロンダーネ山地産のアマゾナイトの特徴を主に記載し報告しました。また他の大陸、国で産出するアマゾナイトを入手し産地ごとの微量元素の差に着目して差異の有無を検討しました。

その結果、着色に影響しているとされるFe,Pbの他に着色にあまり影響しないと考えられるRb,Sr,Cs,Baの含有を確認しそれぞれ産地ごとの特徴と地理的な関係を検討しました。

最も産地ごとに差の現れた元素であるRbとPbの含有量の分布を検討したところ、産地ごとにそれぞれ重複しない集合を形成し、産地の特定に応用できる可能性が示唆されました.

本年は昨年薄片としていた南極産のアマゾナイト以外の試料の一部を薄片にして内部組織を観察し、EPMAを用いた定量分析、面分析を行いました。


写真1 アマゾナイトの偏光顕微鏡写真    左:南極セールロンダーネ山地産 右:モザンビーク産

 薄片になった状態での色の濃度は原石またはカット石の状態で色を比較した時の濃度とは異なっていました。また薄片になった状態で観察した結果、各産地ごとにラメラの分布や規則性に差が見られました。

 南極産のアマゾナイトはマイクロクリン双晶が全体的にみられ、アルバイト成分に富むラメラが双晶面方向に分布しています。モザンビーク産のアマゾナイトは平板状ではなく断面が楕円形に近いアルバイト成分に富むラメラが存在しています。


写真2 アマゾナイトの偏光顕微鏡写真    左:マダガスカル産 右:ペルー産

 マダガスカル産のアマゾナイトは大きな樹枝状〜レンズ状のラメラが存在します。また細かな双晶の幅が不均一でした。ペルー産のアマゾナイトはアルバイト成分に富むラメラはほとんどが自形に近い結晶で双晶の方向とは異なる向きに一定方向に定向配列しています。y


写真3 アマゾナイトの偏光顕微鏡写真  左:アメリカ産 右:ブラジル産

  アメリカ、コロラド州産のアマゾナイトは大きな脈状のアルバイト成分に富むラメラは見られず細かなものだけでした。半自形の斜長石を包有しています。ブラジル産のアマゾナイトは大きな脈状のラメラは存在せず細かなラメラのみ存在します。双晶面は直線的ではなく歪んだ形状を呈しています。


写真4アマゾナイトの偏光顕微鏡写真  ロシア コラ半島産

 ロシア、コラ半島産のアマゾナイトは肉眼でも確認できる大きなラメラがさらに双晶している様子が観察されました。このように偏光顕微鏡で観察された各産地のアマゾナイトの内部組織はそれぞれ大きく異なっています。


写真5南極産アマゾナイトの反射電子像写真 明るい部分はKに富む長石、暗い部分はNaに富む長石

EPMAを用いた微小領域の定量分析ではピンポイントでの主要元素と微量元素の含有量が測定可能で不均質な試料の組成の変動を定量的に調べることが可能です。また面分析では主要元素と微量元素の濃度分布と不均一性を調べることが可能です。

これにより微量元素の分布と主要元素の分布関係や含有量の変動幅が明らかになり昨年の微量元素の差に与える影響が明らかになります。

南極産のアマゾナイトの定量分析の結果カリウムに富む部分の組成はほぼ純粋な正長石でナトリウムに富む部分は99mol%前後の曹長石成分と1mol%前後の灰長石成分から構成されていることがわかりました。

面分析の結果、主要成分であるカリウムが多い部分にRb,Sr,Feがわずかに濃集する傾向が認められCs,Pbの分布はほぼ均一と見られます。Baは含有量が低く検出限界付近だったため分布は不明でした。



この一連の研究を簡単にまとめますと、薄片観察を行った結果、それぞれの産地から産出したアマゾナイトの内部組織は異なった特徴が観察されました。いずれの産地のアマゾナイトからも微小なラメラは観察されますが 大きなラメラの存在や分布、形状とインクルージョンには産地ごとに差が見られました。内部組織の差が何を示すのかは既存の文献でも諸説あり今後の検討が必要です。

また昨年の研究で明らかになった微量元素の中で特にRbとPbは産地ごとに差がみられます。EPMAによる面分析の結果、南極産アマゾナイトのRb,Sr,Cs,Fe,Pbの含有量分布は、 Rb,Sr,FeはKと似た挙動を示しますが他の元素はあまりラメラ構造に影響されないことが明らかになりました。微小領域の組成変動は定量分析の結果、マクロな領域(φ2mm〜)の組成分析で昨年示した微量元素の 分布の誤差範囲に収まり、変動が与える影響は少ないと考えられます。 母岩である花崗岩質の岩石試料の年代測定は現在進行中です。年代学的な検討は今後の課題になると思われます。

*薄片はすべて破壊検査のため通常の30μmより意図的に厚く作成しています


写真6 セール・ロンダーネ山地を調査する第50次南極観測隊



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