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1.はじめに ダイヤモンドはその比類なき輝きと耐久性、希少性などの宝石の条件を余すことなく兼ね備えた宝石の王様である。GAAJ-ZENHOKYOラボに供される宝石素材の総数(鑑別+グレーディング)のおよそ7割〜8割がダイヤモンドである。鑑別だけに限っても3割はダイヤモンドであり、この比率は数年来変化しておらず、ダイヤモンドが宝石として如何に重要なアイテムかが推し量れる。 また、ダイヤモンドはあらゆる物質の中で最も高い硬度・熱伝導率、半導体としての優れた性質、赤外領域から紫外領域に至る広い光の透過域、化学的・熱的安定性を有することから、工業的にも優れた素材として利用価値が高い。第二次大戦の頃から安定供給のためにダイヤモンドの合成研究に拍車がかかり、1955年に初めてダイヤモンドの合成に成功した。今日では天然で見られるほとんどのタイプや色の宝石質合成ダイヤモンドが製造されるまでになっている。 以下にダイヤモンド合成にまつわる重要なトピックスを回顧し、合成ダイヤモンド鑑別の現状をまとめる。 |
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2.合成ダイヤモンド・レビュー
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3.合成ダイヤモンドの鑑別 ◇生い立ちの違いを探る 天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドは生い立ち(生成起源)の違いはあれど、ともに“ダイヤモンド”であり、化学組成と結晶構造は同じである。したがって、組成や構造に由来する屈折率、分散度等の光学的性質や硬度、劈開、比重などの物性に違いはなく、これらを識別の手がかりにはできない。 天然と合成を識別する際には、両者の結晶成長や履歴などの生い立ちの違いを見出すことが重要となる。両者の生い立ちの違いが、結晶の外形や、内部に見られる成長構造の相違となって現れ、それらを如何に検知できるかが鑑別の鍵となる。 ◇天然ダイヤモンドの生い立ち 宝石質の天然ダイヤモンドのほとんどは、地下140〜250kmの上部マントルの高温高圧下で生成したと考えられている。かんらん岩やエクロジャイトなどの岩石が直接のダイヤモンドの母岩であり、キンバーライトやランプロアイトのマグマがこれらを取り込んで地表まで運んだとされている。ダイヤモンドは、その結晶構造から理論的には八面体になることが知られている。実際の天然ダイヤモンドは、成長過程や地表に運ばれる際にマグマの中で溶解や塑性変形を受けているため、丸みを帯びた八面体となることが多く、一部では破断した不規則な形態も見られる。 ◇ダイヤモンドの合成法 ダイヤモンドを合成するには、いくつかの方法が知られている。HPHT(高温高圧)法、CVD法、衝撃法がそれである。さらに近年では直接転換法も知られている。これらの中で宝飾用に適するダイヤモンドを合成できるのはHPHT法とCVD法である。 HPHT法はFe(鉄)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)などの金属溶媒を用いてダイヤモンドの主元素であるC(炭素)をこれらの金属に溶解させ、ダイヤモンドの安定な高温高圧下でダイヤモンドの結晶を析出させる方法である。金属溶媒の種類は製造者や製造したい色によって異なるが、でき上がる結晶の形態は、主に六面体面と八面体面の集形となり主に八面体の天然とは異なっている。また、金属内包物を取り込むことがあり、これらが鑑別の手がかりとなる。 CVD法とは、気相に含まれている原子や分子の吸着反応、熱分解などを利用して結晶を成長させる技術のうち、成長過程で化学反応を伴うもの(Chemical Vapor Deposition)をいう。CVD法を使ってダイアモンドを合成する際は、ダイヤモンドが熱力学的に不安定な低い温度・圧力の領域(たいていは大気圧の1 / 10程度)において、ダイヤモンドの原料となる炭素を含むメタンなどの有機化合物の気体を解離させ、ラジカルと呼ばれる活性状態にして、800〜1,000℃程度に維持した基板上にダイヤモンドを析出させる。CVD法では六面体面に平行に切り出した種結晶上に成長させるため天然とは晶癖が異なり、特有の積層構造が鑑別の手がかりとなる。 |
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