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真珠養殖に様々な核が使用され始めたという現状において、その判別にむけての基礎研究として、現存する種々の核の材質そのものを調査した。これらのサンプルには貝殻から成形された核(淡水産二枚貝、海水産二枚貝、海水産巻貝)、加工を施した核(蛍光増白剤処理、ロンガリット処理、張り合わせ)、貝以外の材質の核(バイロナイト、セラミックス)が含まれる。一般鑑別検査として、拡大検査、紫外線蛍光検査、比重測定を行い、さらに紫外-可視領域および赤外領域の分光分析、蛍光X線分析およびLA-ICP-MS分析を行った。 |
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◆はじめに 1907年、日本で始まった真円養殖真珠は有核で、核には当初様々な物質が試みられたが、比重、硬さ、加工の容易性、原料入手の可能性などから、最終的には淡水産二枚貝の真珠層を削って丸くしたものが使われるようになった(図-1)。
1919年、パリで養殖真珠は本物か偽物かを争う裁判が行われたが、この時、核の材質については問題にされなかった。もし、当時貝殻を削って丸くしたものではなく人工物を使用していたら、裁判の結果は変わっていたかも知れない。日本の真珠養殖業者は、これ以来伝統的に当時の材質を維持してきた。核材料としては当初中国産淡水産二枚貝が使用されたが、第二次世界大戦後は、中国との貿易が絶えたため、米国産のものに代わっている。 その後、真珠養殖産業の発展、特にグローバル化に伴うシロチョウガイ、クロチョウガイを母貝とする海外真珠養殖が拡大し、核需要も急速に増大していった。シロチョウガイ、クロチョウガイ真珠のサイズは大半が10mmアップであったため、サイズの大きい核を作るには貝殻の厚い10年以上の淡水産二枚貝を大量に必要とした。こうした核用原貝の需要増加に伴い、米国産淡水産二枚貝の資源が急速に枯渇し始め、これを懸念した米政府は多くの種類が絶滅の恐れがあるとしてワシントン条約(CITES)の付属書I、IIに指定して資源保護に乗り出した。その結果、現在核材料用に採取が認められているのはピグトウ「ブタアシカワボタンガイ」(Fusconaia flava)、ウォッシュボード「オオウネカワボタンガイ」(Megalonaias gigantea)、メープルリーフ「ヒラガマノセカワボタンガイ」(Quadrula quadrula)、スリーリッジ「ウネカワボタンガイ」(Amblema plicata)、エボニーシェル「ダイコクカワボタンガイ」(Fusconaia ebena)など、わずか数種類である。 原貝の採取が制限され、サイズの大きい核が作られる貝が大幅に減少するにつれ、核の値段が大幅に上昇した。一方、市場では真珠の価格が下落し、核の価格が真珠に及ぼす影響も無視できなくなり、その結果安い核に対する需要が増加した。こうした需要を受けて、市場には次のような安価な代替品が登場するようになった。
このように、様々な核が何の情報開示もなく使用され始めたことを懸念した(社)日本真珠振興会では、2009年版真珠振興会真珠スタンダードの中で核について次のように定めた。
これまで養殖真珠の核の材質については問われることは無かったが、今後材質について何らかの規制が必要になることが予想される。そこで今回三宅真珠核工業(株)に依頼し、現存する核サンプルをできるだけ多く集めてもらい、それらの宝石学的検査および成分分析などを試みた。将来この研究を発展させ、各種養殖真珠の核の材質を非破壊で判別する手法を確立したい。 |
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