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Research Lab. Report 2007.01.6
新しいコーティング処理ダイヤモンド
全国宝石学協会 北脇裕士(FGA, CGJ)
2006年11月頃から新しいコーティング処理のダイヤモンドが国内で流通し始めている。これらはナチュラル・カラーであればファンシー・ピンク〜ファンシー・ビビッド・ピンクにグレードされる色で、目視では一見して処理と判断するのは困難なため注意を要する。

 EGL USAグループが2006年11月14日付けで新しいダイヤモンドの表面処理についての緊急報告を出した(www.eglcanada.ca)。
また、同様の内容がラパポートニュースから同月19日に配信され(http://www.diamonds.net/news/NewsItem.aspx?ArticleID=16078)、さらに12月1日付けのGIA Insiderでも"New"Coated Dia-mondsのレポートが配信されている。
 EGLの報告によると、2006年の後半からEGL USAの鑑別ラボに多数のピンク・ダイヤモンドが持ち込まれ、鑑別の結果、これらは新しい技術のコーティング処理がされたものとわかった。これらのピンク色のダイヤモンドは色が均一で見た目には天然の色にそっくりであった。ナチュラル・カラーのピンク・ダイヤモンドに一般的なピンク色の色帯(ピンク・グレイン)がなく、パビリオン側からカラー・フラッシュが見られるものがあったと報告している。また、一部でファセットの境界で色のはがれたものが見られたとのことである。
 この報告とほぼ同時期にGAAJの鑑別ラボにも同様と思われるピンク色のコーティング処理されたダイヤモンドが持ち込まれるようになった。我々が観察したものは0.005〜0.3ct程度の小粒石で(
写真-1)、すでにブレスレットなどの宝飾品に加工されたものもあった。コーティング処理されたものはカラー・グレーディングを行わないが、ナチュラル・カラーに対応させるとファンシー・ピンク〜ファンシー・ビビッド・ピンクにグレードされる色であった。クライアントの話によると、これらは最近アメリカで処理されたものでピンク色の他にもオレンジ、ブロンズ・カラー、レッドなどもあるとのことである。サプライヤーの説明文によると洗剤、紫外線、超音波クリーニング、常温での酸による影響を受けず、従来のコーティング処理のものに比べて耐久性に優れているとのことである。また、ピンク色の場合、処理前はHカラーアップのイエロー系でVS〜SIクラスを用いているらしい。

写真-1:
最近見かけるようになった
ピンク色のコーティング処理ダイヤモンド

 外観の色は均質であり、一見して処理と判断するのは困難であった。しかし、天然の同様のカラーのダイヤモンドと並べてみると、フェイスアップではやや濃色に(
写真-2)、フェイスダウンでは淡く見えた(写真-3)。

写真-2:
コーティング処理されたピンクは同様のナチュラル・カラー(右から2番目)に比べてフェイスアップではやや濃く見える
写真-3:
逆にフェイスダウンではコーティング処理ダイヤモンドの方が淡く見える(右から2番目はナチュラル・カラー)

これは後述のようにパビリオン側にのみピンク色のコーティング層が付着しているためと考えられる。ヨウ化メチレンに浸漬し、白色板を通して拡散光で観察するとパビリオン側の一部にコーティングの剥がれた箇所が認められた(
写真-4)。また、ファセット・エッジにも同様の剥がれた痕跡のあるものが認められた。このようなコーティングの剥がれは照明を工夫しても宝石顕微鏡下では発見が困難であるが、微分干渉顕微鏡下では極めて容易である(写真-5、6)。観察したすべてのパビリオン側のファセットにおいてコーティングの剥がれが容易に観察できた。しかしながら微分干渉顕微鏡を用いてもテーブルおよびクラウン・ファセットにはコーティング層は認められなかった。
写真-4:
コーティング層の剥がれ(ヨウ化メチレンに浸漬)
写真-5:
コーティング層の剥がれ(微分干渉顕微鏡による)
写真-6:
コーティング層の剥がれ(微分干渉顕微鏡による)
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