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GAAJラボにおける最近のトピックスを以下に報告する。なお、本報告は平成18年度宝石学会(日本)の一般講演で発表した内容を一部加筆修正したものである。
はじめに GAAJラボではHPHT処理したダイヤモンドについての実験を、物質材料研究機構の神田久生博士の協力のもと継続的に行っており、過去の宝石学会を始め様々な形でその成果を報告してきた。今回は、新たに行った2例のHPHT処理前後における色相の変化、外部特徴・内部特徴の変化、フォト・ルミネッセンス分析(以下PL分析と記述)を行った。以下にその詳細を報告する。 IIb型ブラウン・ダイヤモンド 色相の変化 IIb型のダイヤモンドは通常淡青〜灰色味のある色相であるが、塑性変形を被った場合には褐色味を帯びることがある。今回はこの極めて特殊なIIb型のブラウン・ダイヤモンドを用いてHPHT処理実験を行った。 写真-1は処理前後の外観である。処理前の重量とカラー・グレードはそれぞれ0.357ct., Kカラーと0.389ct., V. L. Brownであった。これらを物質材料研究機構にて1800℃、6万気圧、10〜15分でHPHT処理を行った。この後、アメリカのSundance社に依頼して更にHPHT処理を再度行った(Sundance社は処理条件を非公開としている)。リカット後の重量とカラー・グレードはそれぞれ0.349ct., Light Grayish Blueと0.382ct., Light Blueに変化した。この色の変化は歪みによる褐色味がHPHT処理により除去され、更にIIb型のホウ素による青色の発色に依るためである。
外観特徴 HPHT処理後ではダイヤモンドの表面が融解し、写真-3のように曇りガラス様の外観になるため、HPHT処理後はリカットもしくはリポリッシュが必要である。従って、ファセット面に融解した痕跡が認められればHPHT処理が疑われ、逆にそのような痕跡の無いナチュラル面などが残っていれば、未処理の可能性が高い。写真-3にはフェザーの一部がグラファイト化した痕跡が見られる。また、写真-2にてHPHT処理後のラウンド・ブリリアント・カットの石が割れているが、このようにクラリティの低いサンプルではHPHT処理によってクリベージが広がり、破損する危険性がある。
PL分析 RENISHAW社製顕微ラマン装置RAMA-SCOPE SYSTEM 1000Bを用いてPL分析を行った。励起用レーザーとして514nmArレーザー、488nmArレーザーを使用した。通常、天然のIIbダイヤモンドでは637nmは弱いかまたはほとんど無く、しばしば566nm、648nm等にピークを伴っている。処理前後では主にNVセンタに変化が見られ、637nmがより強くなるか、処理前に見られた566nm、575nmおよび630nmのピークが処理後に消失する傾向にある。 |
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