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検査方法
  GAAJラボにてターフェアイトあるいはマスグラバイトとして現在までに鑑別した85点のサンプル(宝石学会(日本)講演時)においてデータの解析・集計を行った。
  これら全てのサンプルについて標準的な鑑別方法による観察、ラマン分光分析(RENISHAW社製顕微ラマン装置RAMA-SCOPE SYSTEM1000B、励起用レーザーとして514nmArレーザーを使用)、蛍光X線分析(日本電子社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置JSX3600を使用)を行った。更に2ピースについてはX線粉末回折分析を行った(島津製作所製X線粉末回折装置XRD-6000を使用)。

鑑別による特徴
  屈折率および比重は前述のとおり重複しており、屈折率は1.715〜1.725、比重は3.60〜3.65の範囲の値を示す。
  拡大検査においてマスグラバイトには針状インクルージョンが比較的高い割合で見ることができ、他にも結晶、液体インクルージョン等が観察できる。しかしながら、いずれもターフェアイトにも見られるため、拡大検査も両者の鑑別の決め手とすることができない。
  従って、これらを識別するためには先端的なラボラトリーの技術が必要である。

ラマン分光分析
  ターフェアイトとマスグラバイトとではラマンスペクトルに有意な差異が見られた(図-2)
  特に410cm-1付近のピーク及び710cm-1付近のピークの位置の相違は明瞭である。ラマン分光分析ではこのどちらかのパターンに分類でき、両者のピークが入り混じった中間タイプは存在しないため両者を明確に分けることができる。

図-2:
ターフェアイトとマスグラバイトのラマンスペクトル

蛍光X線分析
  ターフェアイトとマスグラバイトは化学組成が近似しているが組成比が若干異なるため、蛍光X線での測定結果から元素比を求めて比較することにより両者の識別が可能かどうかを検討した。
 図-3は3価の元素であるAl,Ti,V,Cr,Gaを縦軸に、2価の元素であるMg,Ca,Mn,Fe,Znを横軸にしてプロットしたものである。ターフェアイトとマスグラバイトでは両者の分布範囲が完全に分かれている。従来、蛍光X線分析ではFe、Znの含有量をターフェアイトとマスグラバイトの識別の手掛かりにしていたが、これらの元素はターフェアイトにも相当量含まれる可能性があるため、確実な方法とは言えなかった。蛍光X線装置の高い測定精度と測定者の高い測定技術が必要となるが、今回のような2価と3価の元素比を求める半定量分析が両者の識別に有効であることが分かった。

図-3:
ターフェアイトとマスグラバイトのラマンスペクトル

結論
  ラマン分光分析および蛍光X線分析による半定量分析の組み合わせにより、今まで判別困難と思われていたターフェアイトとマスグラバイトも比較的容易に、非破壊で鑑別できることが分かった。既述したように、報告例の極めて少ないマスグラバイトであるが、GAAJラボで現在までに検査した85点のサンプルのうち実に11点がマスグラバイトであり、その中でも最大のものは4.50ct.(現時点で筆者らの知る限り世界最大級のもの)であった。従って市場にターフェアイトとして流通している商品の中にもマスグラバイトが存在しているかもしれない。


参考文献

1)Lore Kiefert.,Karl Schmetzer(1998)Distinction of taaffeite and musgravite. The Journal of Gemmology, Vol.26 ,No.3, pp.165-167
2)Karl Schmetzer.,Lore Kiefert.,Heinz-jÜrgen Bernhardt(2000)Purple to Purplish Red Chromium-Bearing Taaffeites. Gems & Gemmology spring pp.50-58
3)Karl Schmetzer.,Lore Kiefert.,Heinz-jÜrgen Bernhardt.,Murray Burford.,Dunil Palitha Gunasekara(2005)Iron-and zinc-rich gem-quality taaffeites from Sri Lanka. The Journal of Gemmology,Vol.29 ,No.5/6, pp.290-298
4)Karl Schmetzer.,Lore Kiefert.,Heinz-jÜrgen Bernhardt.,Murray Burford(2005)Two remarkable taaffeite crystals from Sri Lanka. The Journal of Gemmology,Vol.29 ,No.7/8, pp.461-466
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