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合成グリーン・クォーツ
1954年、アメリカで初めてのグリーン・クォーツの合成が報告されている。商業ベースで合成されるようになったのは1960年代になってからで、主にロシアで生産されている。1995年にはイエローとグリーンのバイ・カラーが合成され、1997年にはアメシスト、シトリン、グリーンの三色のマルチ・カラーが合成されている。
 天然の水晶類は図-2に示すような晶癖が一般的である。大きな菱面体面rと小さな菱面体面zがそれぞれ3面ずつ交互に配置した錐頭と、6つの柱面mで構成されている。底面cは天然にはまず観察されることはない。

図-2:
水晶の一般的な晶癖

これはc面の成長速度が他の面よりも早いために生じる現象である。すなわち、等時間において他の面より成長が早いため、徐々に外形から面積が減少し、最後には消失してしまうのである。これに対して、合成クォーツ類は通常c面が大きく発達している。これは商業ベースで生産するためには、大きくて品質の良い結晶を早く育成するために種結晶を用いるためである。すなわち、成長速度の速いc面に平行な方位の種結晶を用いてそれを短期間で育成させることによってc面が大きくなるのである。したがって、結晶原石を見れば、クォーツ類の天然と合成は簡単に識別可能である。しかし、通常は宝石用にカット・研磨されているため簡単ではない。それでも、カラー・ゾーニングがどの面に該当するかを丹念に検査することによって、元の外形を想像することが可能で、鑑別の手がかりとなる。
 天然のグリーン・クォーツ(グリーンド・アメシスト)はほぼ直交する2方向のカラー・ゾーニングが見られるが、合成グリーン・クォーツはc軸(光軸)に垂直な1方向のカラー・ゾーニングが見られる。また、天然のグリーン・クォーツ(グリーンド・アメシスト)は加熱前の天然アメシストの特徴であるブラジル双晶に起因した羽根状インクルージョンや直交偏光下における特異な干渉縞(ブリュスター・フリンジ)を示す。
写真-4:
色帯による天然と合成の鑑別例/天然はほぼ直交する2方向の色帯が観察される(左)が、合成はc軸に垂直な1方向の色帯が観察される(右)
写真-5:
天然グリーン・クォーツ(別名:グリーンド・アメシスト)の拡大特徴/ブラジル双晶に起因した羽根状インクルージョン(左)と直交偏光下におけるブリュースター・フリンジ(右)

いわゆる“グリーンド・アメシスト”は特定の産地のアメシストを加熱して得られるもので、どちらかといえば希少石である。一部の地域では稀にナチュラル・カラーのグリーンが産出するが、残念ながら人的に加熱したものとの識別はできない。最近になって、大量のグリーンのクォーツが販売されているが、これらは人為的に照射したもので、“グリーンド・アメシスト”の別名で呼ぶことはできない。また、合成グリーン・クォーツが商業ベースで製造されている。これらは、視覚的には識別が困難であるが、結晶原石の晶癖に由来したカラー・ゾーニングとブラジル双晶に起因した干渉像を丹念に観察することで鑑別することができる。(北脇裕士)
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