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◆長石類の宝石変種◆
◇サンストーン
サンストーンは鉱物名ではなく、長石のアベンチュリン効果を示す変種に与えられた宝石名で、本来はインド産などのオリゴクレースにヘマタイト等の鉄鉱物を内包するものに与えられた名称である。
1~2年前から商業的にサンストーンと称されているアンデシンを見かけるようになった(写真-6)

写真-6: 天然アンデシン

長石は幅広い組成範囲の固溶体を形成する鉱物である。三斜晶系に属するプラジオクレース(斜長石)はCa側の端成分であるアノーサイト(An)とNa側の端成分であるアルバイト(Ab)の連続固溶体であるため、アノーサイトとアルバイトの中間の化学組成を有する長石が存在し、その組成比によって6種類に細分されている(図-1)

図-1: 長石の固溶体関係図(Dana's New Mineralogyより)

アンデシンはオリゴクレースとラブラドーライトの間に位置し、屈折率や特性値も両者の中間にある。このアンデシンは橙赤色ではあるが、アベンチュリン効果を有しないのでサンストーンと呼ぶのは適当ではないと考えられる。
◇ムーンストーン
ムーンストーンも鉱物名ではなく、正長石(オーソクレース)と斜長石系列の一方の端成分である曹長石(アルバイト)との層状組織による光の干渉効果と散乱によって青色~白色のシィラーを示す宝石変種である。
1990年代中頃より“レインボー・ムーンストーン"という名称で市場に登場した宝石がある(写真-7)。これは商業的にムーンストーンと呼称されているが、鉱物学的には長石グループのラブラドーライトである。したがって、上述のムーンストーンの定義には当てはまらない。
最近、ブルー・ムーンストーンという名称で市場に登場した宝石がある(写真-8)。これもムーンストーンと呼ばれているが、蛍光X線分析にて組成を調べた結果、鉱物学的にはアノーサイト成分が10mol%以下の斜長石であった。このような化学組成でイリデッセンスを示す長石はペリステライトと呼ばれている※4。

写真-7: “レインボー・ムーンストーン"と誤称される天然ラブラドーライト
写真-8: 天然ペリステライト

(おわり)

【参 考】
●下記の『ジェモロジィ』または『GAAJホームページ(www.gaaj-zenhokyo.co.jp)』をご覧ください。
※1.『ジェモロジィ』2000年9月号、2004年11月号
※2.『ジェモロジィ』2004年5月号、2005年2月号
※3.『ジェモロジィ』2005年2月号、2005年6月号
※4.『ジェモロジィ』2003年2月号、2003年6月号、2005年5月号

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