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◆◇はじめに 天然ブラウン・ダイヤモンドの結晶を高温高圧条件で熱処理(HPHT処理)することにより淡色化する技術が話題になって数年経つが、いまだによくわからない問題も多い。 このHPHT処理の問題を完全に理解するためには、ダイヤモンドをHPHT処理したときどのような変化が起きるかを知ることはもちろん重要であるが、天然ダイヤモンドの履歴、特にブラウン・ダイヤモンドがどのように生成するかを知ることも重要であろう。ここではそのブラウン・ダイヤモンドの生成過程に注目する。 天然のブラウン・ダイヤモンドと無色透明のダイヤモンドを比べた時の大きな違いは、色の違いは当然であるが、それ以外に歪みの違いもある。図-1のように偏光顕微鏡で観察するとよくわかる。 ブラウン結晶には歪みによる筋状模様が顕著である。このことから、ブラウン・ダイヤモンドは、地球内部で成長した後、異方的な力を受けて結晶構造が歪んだものと考えられる。そして、この歪みで何らかの欠陥が発生し、それがブラウンの着色原因となっているのではないかと予想している。このようなことから、その予想を確認するための実験を行った。つまり、人工的にダイヤモンドに歪みを加えて、その変化を調べた。行った実験はHPHT処理である。通常HPHT処理は歪みを除去する方向で行われるが、ここでは逆に歪みを加えるという視点で行った。 歪みを加えることによってブラウンの着色が現れることを確認できると一番よいのであるが、実験手法の問題もあって、ここでは、 カソード・ルミネッセンス(CL)によって歪みの影響を調べた。その結果、ブラウン・ダイヤモンドに特徴的に見られるカソード・ルミネッセンス・スペクトルが、人工的に歪みを加えたダイヤモンドにおいても認められた。
本研究に用いた試料は、高圧合成のII型の単結晶で、2mm径の多面体である。この結晶を研磨して平板状にしたものを用いた。この結晶を、ヒーターなどいろいろな部品と一緒に、図-2のような試料構成に組立てて、超高圧装置の中にセットした。ここで用いた超高圧装置はベルト型と呼ばれるもので、その写真を図-3に示す。 通常この装置はダイヤモンドの合成に用いられる。
カソード・ルミネッセンス(CL)とは電子線を物体に照射したときに発生する光のことであり、テレビのブラウン管がそれにあたる。 ブラウン管では電子が画面に塗ってある蛍光剤にあたり発生する光をわれわれは見ている。このCLは、物質内の不純物に非常に敏感であり、百万分の一以下の極く微量でも検出できる。また、発光の色により、どのような不純物が含まれているかも知ることができる。本研究で用いたCL装置の写真を図-4に示す。これは走査型電子顕微鏡に、分光器(光の波長を測定する機器)を組み合わせたものである。その模式図を図-5に示す。電子銃から発生した電子が試料に衝突すると、試料から光が発生する。 その光を凹面鏡で集光し、分光器に導入する。分光器の中の回折格子で光は波長ごとに分かれて、検出器に入り、電気信号となって、 発光スペクトルというグラフを測定データとしてわれわれは見ることができる。
◆◇結果 ◇透過光写真◇ 熱処理前後の結晶を図-6に示す。透過光で撮影したものであるが、一組は偏光板を挟んで撮ったものである。この結晶は無色透明であり、熱処理後でも色は変わっていない。ただ、一部が破壊したり、内部の包有物の形が変わったりしており、超高圧下で熱処理を受けた影響は見られる。偏光で見ると、熱処理前後の違いはもっとはっきり見える。熱処理前では偏光はほとんど通過せず黒く見えるが、熱処理後はまだら模様に見える。これは結晶構造が歪んだためである。
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