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本報告は平成16年度宝石学会(日本)の一般講演で発表した内容をまとめたものである。 ◆はじめに 1990年代に入って、高温高圧法による合成ダイヤモンドが宝石市場に流通するようになった。これらのほとんどは2ct以下のイエローのIbタイプであるが、一部はHPHT処理によりIaタイプのグリーニッシュ・イエローにされている。また、少量ではあるがIIaタイプのカラレス、IIbタイプのブルーも存在する。最近では照射と熱処理によりピンク〜レッドもしくはパープルにされたものもある。 従来、宝石用に合成されるダイヤモンドは主にロシアの技術を用いたものであったが、近年はアメリカのGemesisがロシアの技術を独自に改良した方法でイエロー・ダイヤモンドを量産しており、Chathamはロシアと異なった技術で製造されたものを販売している。特にチャザムは本年のツーソン・ジェムショーにおいても積極的にPRしており、その製品はピンク、ブルー、イエロー等バラエティに富んでいる(Photo.-1)。
◆合成ダイヤモンドの鑑別 -基本的な考え方- ダイヤモンドを合成するにはいくつかの方法が知られている。高温高圧(HPHT)法、CVD法、衝撃法がそれである。これらの中で宝飾用に適するダイヤモンドを合成できるのは高温高圧(HPHT)法である。CVD法はApollo Diamond inc.が製造・販売を表明しているが、現時点においては未だ量産されているという報告はない。おそらく、天然ダイヤモンドと価格的に競合するのは困難であると思われる。いずれにしてもCVDダイヤモンドは今後注目していかなければならないアイテムではある。 さて、高温高圧(HPHT)法ではFe,Ni,Co等の金属溶媒が用いられている。ダイヤモンドの主元素であるC(炭素)がこれらの金属に溶解しやすいためである。これらの種類は製造者や製造したい色によって異なるが、金属溶媒を用いることによってできあがった結晶の形態が天然とは異なっている。また、内包物として金属インクルージョンを取り込むことがあり、これらが鑑別の手がかりとなる。 ◆ダイヤモンドの一般鑑別 ◇内包物 天然ダイヤモンドは地下150〜200kmの上部マントルで生成されると考えられている。その上部マントルでダイヤモンドと共存する鉱物はパイロープ・ガーネット、ダイオプサイド、エンスタタイト、オリビン等でこれらがインクルージョンとして取り込まれることがある(Photo.-2)。
◇歪複屈折 ダイヤモンドは等軸晶系に属し、光学的に等方性である。しかし、ほとんどの天然ダイヤモンドは交差偏光下で歪複屈折を示す。天然ダイヤモンドに観察される歪複屈折は成長時によるものと塑性変形によるものに大別され、特に後者は天然の鑑別特徴となる(Photo.-4)。
◇紫外線蛍光 天然ダイヤモンドは紫外線に対して様々な蛍光色を発することが知られている。主なものはN3センタに起因する青白色、H3センタに因る緑色、NVセンタによるオレンジ色、S1あるいはS3センタによるイエロー等である。そしてこれらの蛍光色や強度はダイヤモンドのタイプやカラーにある程度対応している。合成ダイヤモンドにおいても紫外線蛍光に特徴が見られる場合が多い。タイプIIのカラレスでは短波紫外線下で黄白色の燐光を示し、ピンクではNVセンタに因るオレンジ色の発光が観察される。また、HPHT処理された合成の彩度の高いイエローではニッケルに関連した欠陥に由来する緑黄色の強い発光が見られることがある。他に合成ダイヤモンドの特徴としては、地色に関係なくセクター・ゾーニングに伴う十字状の蛍光むらが観察されることがある(Photo.-5)。
◇カラー・ゾーニング 天然ダイヤモンドは主に成長時の不純物元素(主に窒素)の取り込み具合の相違によってカラー・ゾーニングが形成される。これらは通常八面体面に平行である。また、結晶生成後の塑性変形によってもブラウンやピンクのカラー・ゾーニングが形成される(Photo.-6)。
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