>>Topへ戻る >>「Research Lab. Report」タイトルリストへ戻る |
|
|||||||||||||||||||||||
岩石中にルビーが含まれている宝飾用素材としてルビー・イン・ゾイサイトがよく知られている。その他にもミャンマー産のアノーサイト―パガサイト―ピコタイト中のルビー(Karl Schmetzer., 2003)、シベリア産の長石―雲母中のルビー(Grygoriev, 2000)、カヤナイト中のルビー(Elisabeth,Strack, 1993)などの報告例がある。 最近、写真に示す半透明から不透明の岩石中のルビーを検査する機会が得た。 分析の結果、これらは高濃度のCrを含有する白雲母(ファクサイト)中のルビーであることが分かった。以下にその内容を報告する。
● 試料および分析法 本研究では丸玉(47.57g)、カボション・カット(7.079ct)の2ピースの分析を行った。試料をご提供いただいた(株)ミユキの亀山 実氏によると、これらはインド南部のMYSORE地域から新しく産出されたものらしい。 鉱物相を区別するために、X線分析顕微鏡(JSX-3600)、X線粉末回折装置(XRD-6000)及びラマン分光分析装置(RENISHAW1000)を用いて分析を行った。X線分析顕微鏡では試料の表面を微小コリメータが採用した50μmに収束したX線ビームで、マトリクスの白い部分90点、緑色部200点、赤部50点、褐色部10点の総計350点を測定した。また、7×7mmの広範囲の二次元組成マッピングを行い、任意方向から観察できる三次元組成マッピング図も作成した。X線粉末回折装置を用いて、色の異なる部分を粉末にし、回折データによってその鉱物種を検索した。顕微ラマン分光分析装置では、488nmのArレーザを用いて外観上、色の異なる部分の分析を行った。 ● 分析結果
また、マトリクスの一部を構成している白色部分はSiに富む白雲母からなり、SiO2は51.89〜80.89wt%と広範囲の値を示している。このマトリクスには微小の石英が混晶しており、X線粉末回折データからも確認できる。Siが富むにつれ、AlとKの含有量は減少する傾向にある。不純物としては1wt%以下のFe、Tiが含有されているが、Crの含有量は少なく、ほとんど検出されていない場合もある。また、少量のBaが検出された。 赤色部はコランダムすなわちルビーで、比較的幅広いCr2O3の含有量:0.25〜0.6wt%を有し、Fe2O3:0.15wt%、Ga2O3:0.002wt%以下の低い値を示す。他の遷移金属元素であるTiやVやMnなどは非検出であった。 褐色結晶はルチルであり、不純物として少量のVとFeを有する。 以上述べた各種マトリクス及びインクルージョンは顕微ラマン分光分析でも確認できている。緑色マトリクスは微小質結晶集合体から構成されているため、ラマン分光の強度は比較的弱く、白雲母の確定は困難であった。
|
|||||||||||||||||||||||
|