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今月の鑑別室から 2003.1.25
"パライバ"トルマリン
<"Paraiba" tourmaline>
技術研究室  北脇 裕士
 "パライバ"トルマリンと通称されている銅を含有するエルバイト・トルマリンの現状について報告する。
We report this month the present status of copper-containing elbaite tourmaline, commonly known as "Paraiba" tourmaline.

 トルマリンは複雑な化学組成を有する珪酸塩鉱物で多くの端成分が知られている。また、これらが複雑に固溶体を形成するため、厳密に鉱物学的な分類を行うのは極めて難しい。
宝石名としては色や外観によって変種分類されるのが普通で、鑑別書上では"天然○○トルマリン"と色名を冠して表記されることが多い。また、商取引などではルベライトやショールなどのように伝統的な名称も使用されている。
 さて、宝石変種のトルマリン中で最も人気の高いものの一つにCu(銅)イオンで着色したブルー〜グリーン系の通称"パライバ"トルマリンがある。このトルマリン発見のきっかけは1982年に遡る。資料によると、ブラジルの地質調査所がマンガノタンタライトを採掘していたパライバ州のBatalha地区において、およそ13人の鉱夫を引き連れたHeitor Barbosa氏によってトルマリン(おそらくマンガンを含有?)が発見された。数年後の1987年の夏には同氏によって風化したペグマタイト鉱脈から彩度の高いブルーのトルマリンが発見された(のちにこれがCu(銅)イオンによって着色したものと判明する)。引き続き数キログラムの宝石品質のグリーン・トルマリンが採掘され、数百ctがカットされた。このCu(銅)イオンで着色したブルー〜グリーンのトルマリンは鉱物学的にはエルバイトであるが、その産地に因んで"パライバ"トルマリンと呼ばれるようになり、1988年にはブラジルの宝石市場で初めて売買され、1989年のツーソン・ジェム・ショーに出品されて一躍世界的に有名となる。

 その後、1990年代に入るとパライバ州の北側に隣接するリオグランデ・ド・ノルテ州のMulung鉱山や Alto Dos Quintos鉱山からも同様に(銅)イオンで着色したトルマリンが発見されている。これらのリオグランデ・ド・ノルテ州から産出するものも地質的にはパライバ州と連続しており、同様の産状によると考えられている。実際の取引においても両州産共に"パライバ"トルマリンと称されていることが多い。
 また、2001年の夏頃からアフリカのナイジェリアからも(銅)イオンで着色したブルー系のトルマリンが発見されて話題を呼んでいる(本誌2002年3月号参照)。現状ではナイジェリア産のものは淡い色調のものが多いようであるが、見かけはブラジル産のものと良く似ている。ナイジェリア産のものも一部で"パライバ"トルマリンあるいはパライバ・タイプと称されているが、一般にはブラジル北部のパライバ州およびリオグランデ・ド・ノルテ州産に対して"パライバ"という名称が用いられている。

注)一般の鑑別書においてはパライバ等の産地名は記載されません。
  産地鑑別をご希望の際は、検査結果報告書をご利用ください。
  ただし、加熱の有無については判定できません。



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