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今月の鑑別室から 2001.3
ラボにおけるダイヤモンド鑑別の現状<その2>
<The state of gemmological laboratories in the field of diamond identification〈part-2〉>
技術研究室  北脇 裕士
精巧な類似石、合成石および新しい処理の出現など、ますます困難になるダイヤモンド鑑別の現状について報告する。
Elaborated imitations, synthetics or new treatments make the identification of diamonds complicated. “ Formerly, diamond grading consists to grade natural and non-treated diamonds” was a vague and a tacit understanding. But, diamond grader should not believe this superstition. Recently, topics surrounding diamonds like the apparition of new simulants, the improvement of the quality of synthetic stones or the emergence of new type of treatment do not lack.
◆処理されていないかどうか
〜処理の看破〜
ダイヤモンド鑑別の第3のステップは処理の看破である。ここまでにおいて(前号参照)検査すべき石が天然のダイヤモンドと分かったとしても、種々の処理についてその可能性を検討しなくてはならない。ダイヤモンドに施される処理は基本的にはすべてトリートメント(処理石)として明示され、取引されている。したがって、処理の看破は必然的に重要な商業的意味合いをもつこととなる。
 ダイヤモンドは通常、4Cで評価されている。また、ファンシー・カラーはその色の美しさが高く評価されている。そのためダイヤモンドの処理は以下のような見かけの評価を高める目的で行われている。
1. カラー・グレードの改善またはファンシー・カラー化(ペインティング・コーティング、放射線照射、HPHT処理など)
2.見かけのクラリティの改善(レーザー・ドリリング、KM処理、含浸処理など)
 ペインティング・コーティングについては通常の拡大検査あるいは分光分析において看破は比較的容易である。しかし、精巧なコーティングについては第一感としてその不自然さに気づくことが重要である。
 放射線照射については天然のファンシー・カラーおよび処理による色変化のメカニズムを熟知していなければならない。その上において紫外−可視領域、赤外領域の分光分析あるいはラマン分光分析などの高度なラボの技術が導入される。
 HPHT処理はGE-POLやNovaで知られるように世界中の鑑別ラボにとって新たな課題となった処理である(写真-1)。鑑別・グレーディング作業だけではなく、分析技術あるいはその研究開発の重要性を再認識させられた処理ともいえる。 
見かけのクラリティを改善するための処理としてレーザー・ドリリングがある。これは通常の拡大検査で比較的容易に看破が可能である。しかし、昨年来同様の目的で行われているKM処理が話題になっている。これは従来のドリル・ホールがないため視覚的な検査が困難なことも多い(写真-2)。 
 含浸処理は拡大検査によるフラッシュ効果あるいはX線透過性や元素分析などのラボの技術によって看破されている(写真-3)。しかし、数年前からメレ・ダイアにもこの処理が行われており、ダイヤモンド鑑別の作業効率を著しく低下させている。
 
 以上、ダイヤモンド鑑別の現状を概観してきた。より複雑化あるいは多様化する現実が浮き彫りになったのではないかと思われる。


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