>>Topへ戻る >>「Research Lab. Report」タイトルリストへ戻る

今月の鑑別室から 2001.2.1
ラボにおけるダイヤモンド鑑別の現状<その1>
<The state of gemmological laboratories in the field of diamond identification 〈part-1〉>
技術研究室  北脇 裕士
 精巧な類似石、合成石および新しい処理の出現など、ますます困難になる
ダイヤモンド鑑別の現状について報告する。
Elaborated imitations, synthetics or new treatments make the identification of diamonds complicated.“ Formerly, diamond grading consists to grade natural and non-treated diamonds” was a vague and a tacit understanding. But, diamond grader should not believe this superstition. Recently, topics surrounding diamonds like the apparition of new simulants, the improvement of the quality of synthetic stones or the emergence of new type of treatment do not lack.
 “以前からグレーディングに供されるダイヤモンドは未処理の天然ダイヤモンドである”という漠然とした暗黙の了解がある。しかし、これはダイヤモンド・グレーダーにとっては信じてはいけない迷信である。
 ここ数年、新しい類似石の登場、合成石の品質向上、新タイプの処理の出現など、ダイヤモンドを取り巻く話題には事欠かない。21世紀を迎えた今、ダイヤモンド鑑別の現状について考えてみる。

◆ダイヤモンドかどうか
〜類似石の鑑別〜
ダイヤモンド鑑別の最初のステップは“今、目の前にあるダイヤモンドのような石は、本当にダイヤモンドか”という疑問をもつ事である。ダイヤモンドと類似石の鑑別はジェモロジストにとって最も基本的かつ初歩的な事である。しかし、初歩的であるがゆえに上手の手から水が漏れやすい。一般的な類似石について精通している事はもちろん、新しい類似石についてもいち早く対応しなければならない。
◇一般的な類似石
 一般的なダイヤモンド類似石についてここで紙面を使う必要はないであろう。しかし、過去のものとなった類似石が復刻したり、これまでになかったカラーが出現したときは注意が必要と思われる(写真−1)。 
◇新種の類似石
最近、話題になった類似石に合成モアッサナイトがある。ダイヤモンド・セレクターなど熱慣性を応用した判別器具ではダイヤモンドと見誤ってしまうということで話題になった(写真−2)。判別器具の原理も知らずに盲信することさえしなければ鑑別上問題はないが、新たにコーティングしたものやグリーンあるいはブラックのモアッサナイトも出現している。また、小粒石の脇石利用や等軸晶系のモアッサナイトの開発には無関心ではいられない。
◇未知なる類似石
さらに未知のダイヤモンド類似石の利用について予測することも重要である。工業分野では常識的な高硬度・高屈折率物質が宝石業界では全く知られていないというのが現状であろう。たとえばcBN(等軸晶系窒化ホウ素)などはその候補ではなかろうか。

◆天然かどうか
〜合成ダイヤモンドの鑑別〜
 第2ステップはそのダイヤモンドが本当に天然であるかどうかのチェックである。現在、市販されている研磨ずみ宝石質合成ダイヤモンドには各種の色やタイプがある(写真−3)。最も合成として一般的なものは
Ib系のイエローであるが、その色調や蛍光色などは変化に富む。また、HPHT処理や放射線照射を利用したピンク〜レッド、カラー・チェンジ・タイプ、IIbタイプのブルーも存在する。これらの合成ダイヤモンドの鑑別法については「Gemmoligy」連載“ダイヤモンドのすべて”や“合成ダイヤモンド鑑別の現状(99年6月号)”を参照されたい。


Copyright ©2000-2001 Zenhokyo Co., Ltd. All Rights Reserved.