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今月の鑑別室から 2009.11.05
鉛ガラス含浸処理コランダムの新しい表記法と
“ビスマス(Bi)"ガラス含浸処理ルビー
(株)全国宝石学協会技術研究室

 過度に鉛ガラスが含浸処理されたルビーの急速な広がりを懸念して、(社)日本ジュエリー協会(JJA)と(社)宝石鑑別団体協議会(AGL)は鉛(Pb)ガラス含浸処理ルビーに対する表記を改定し、2009年7月1日以降、新しい表記に変更されています。
 また最近、新たに鉛以外にビスマス(Bi)が含浸されているケースにも遭遇したため、その特徴をご紹介します。


 2004年頃より鉛(Pb)系ガラスの含浸処理ルビーが市場に現れるようになり、2008年末頃からはその処理の程度が極めてひどいものが急速な広がりを見せました。これらの情報開示について、JJAとAGLの間で慎重な議論が繰り返されてきましたが、今夏にその改定案がまとまり、2009年7月1日から実施されています。
 AGLでは、鉛ガラス含浸処理の看破には蛍光X線分析装置などの元素分析が義務付けられ、鉛ガラスが検出された場合には宝石鑑別書において表-1の表記となります。また、鉛以外の金属元素が検出された場合は、その旨をコメントします。

表-1:
2009年7月1日以降の宝石鑑別書における新表記

 最近、当ラボでは新たに“ビスマス(Bi)"ガラスが含浸処理されたルビーに遭遇しました(図-1)。

図-1:
“ビスマス"ガラスが含浸処理されたルビー。左/8.359 ct、右(スター石)/8.763 ct

 宝石顕微鏡下では、従来の鉛ガラス含浸処理ルビーと同様に扁平な気泡が多数観察される(図-2) ほか、反射光下ではガラスが露出した部分の反射率が低い様子が観察されます(図-3)。また、DiamondView™を用いることで、おおよその含浸の程度を知ることができます(図-4)。

図-2:
“ビスマス"ガラスが含浸処理されたルビーに観察された扁平な気泡
図-3:
反射光下での観察。反射率の低い領域がガラスの露出している部分に相当する。
図-4:
DiamondView™による蛍光像。青く発光している領域がガラスの露出している部分に相当する。

 このような含浸部分を狙って蛍光X線分析を行った結果、ガラスの成分として鉛およびケイ素(Si)のほか、多量のビスマス(Bi)が検出されました(図-5)。ビスマスは、比較的融点が低いことに加えて人体にとって無害であることから、鉛の代替品として合金などに用いられることの多い元素です。したがって、今後コランダムの含浸処理に鉛に代わってビスマスが使用されるケースが想定され、蛍光X線分析装置などの元素分析が必要不可欠と思われます。

図-5:
“ビスマス"ガラスが含浸処理されたルビーの蛍光X線組成分析結果。


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