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◆ラボラトリーの技術 ◇レントゲン検査 ダイヤモンドと類似石の鑑別にはX線透過性(レントゲン)検査が有効である。これはブラック・ダイヤモンドについても同様である。 特に、ブラック・ダイヤモンドのジュエリーは多数個がセッティングされているデザインが多いため、まとめて検査できる上に写真撮影を行うことによってジュエリーのどの石が類似石かを記録に残し、照合することが可能である(図-8)。
◇蛍光X線(XRF)分析 元素分析は素材の同定を行う上で極めて有効である。オブシディアンやテクタイト、黒色ガラス(模造石)など、拡大検査では特徴が似ているため判別しづらい黒色ガラス類でも、それぞれの識別が可能である。 全国宝石学協会で導入している蛍光X線分析装置はCCDカメラが付属しており、直径2mm以下の範囲の測定が可能である(図-10)。これによりメレサイズのセット石であっても特定のメレの石のみを測定することが可能である。また、測定ステージは360度回転できるように台が付いており、回折の影響を受けずに最も良い角度で測定することが可能である。
◇赤外分光(FT-IR)分析 FT-IRは主に透過スペクトルを測定する装置であるが、光の透過しない黒色石での透過スペクトルは測定不可能である。ただし、石の表面反射スペクトルを測定することにより石の種類を判別することが可能である。ダイヤモンド、CZ、モアッサナイトは結晶構造の違いにより個別のスペクトルが観察できる。この中で、ダイヤモンドは反射スペクトルでは目立った吸収を示さないことが特徴的である。また、その他の黒色不透明石についても同様に異なるスペクトルが得られる(図-11)。
脇石やメレサイズの商品の場合、通常の試料台では測定が困難である。しかし、赤外顕微鏡装置を使用することにより、メレの一粒々を個別に検査することが可能である(図-13)。
◇顕微ラマン分光分析 ラマン分光装置は標準で顕微鏡が備わっているため、FT-IRのように付属装置の必要なく、メレサイズの商品の検査が可能である。FI-IRと同様に分子構造の違いにより個別のスペクトルが観察できるが、一回あたりの測定時間が10秒前後と短時間での測定が可能である(設定により測定時間は前後する)。また、空間分解能が高く、前述のFT-IRでは位置や角度など正確なセッティングが必要であるが、顕微ラマン分光装置ではレーザーの焦点が合えば測定可能なため、あらゆる方向に商品を置いての測定が可能である。そのため、ラマン分光装置の方が利便性は高い(図-15)。
ブラック・ダイヤモンドとCZ、モアッサナイトについては過去に「ジェモロジィ誌」でもその違いが掲載されているが、他の黒色不透明石についても同様にスペクトルに違いが見られるため、判別が可能である(図-16)。
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◆まとめ 近年、黒色石、特にブラック・ダイヤモンドとその類似石が市場に出るようになった。メレサイズのデザインが主であるこれらの商品の登場により鑑別の困難さはより一層増した。これらの黒色不透明石の商品を正確に鑑別するためには、多くの黒色不透明素材に対する一般鑑別の知識を有することはもちろんのこと、検査に必要なラボラトリーの技術を装備できていなければならない。ブラック・ジュエリー、特にブラック・ダイヤモンドの製品を扱っている業者は、類似石が混入しているケースがあることを認識して流通の段階で十分な注意を払う必要がある。(おわり) |
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参考情報 1) ジェモロジィ2000年9月号「ブラック・ダイアモンド」 2) ジェモロジィ2003年5月号「“ブラック"キュービック・ジルコニア」 3) ジェモロジィ2008年9月号「ブラック・モアッサナイト」 4) ジェモロジィ2004年11月号「“ブラック"ダイヤモンドの鑑別」 |
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