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最近、樹脂やオイルなどの無色透明材が含浸されたルチレイテッド・クォーツを目にする機会が多くなってきた。以下にその特徴についてご紹介する。 ルチレイテッド・クォーツはインクルージョンを含むクォーツの代表格で、「針入り水晶」という名前でご存知の方も多いと思われる。このルチレイテッド・クォーツに樹脂もしくはオイルを含浸させたものが、最近鑑別に持ち込まれるようになった(写真-1)。 含浸の目的は、エメラルドによく行われている樹脂やオイルの含浸と同様にフラクチャーなどを目立たなくさせ、透明度を向上させるためである。現在のところ、直径1cm前後のビーズのブレスレットから直径5cm程度の丸玉に至るまで、様々なサイズのルチレイテッド・クォーツに対して含浸が行われているのが確認されている。 外観では無処理のルチレイテッド・クォーツとの判別は困難であるが、宝石顕微鏡による拡大検査では、含浸されたフラクチャーの部分にカラー・フラッシュが観察される(写真-2)。 このカラー・フラッシュはクォーツの表層部分だけではなく、クォーツの内部にまで達しているのが観察される。また、キャビティ部分に充填物として樹脂が溜まっているのが観察されることもある(写真-3)。この充填物はルビーなどに見られる充填物と同様に、拡大検査にて反射率の違いとして観察される(写真-4)。
また、紫外線蛍光検査において無処理のルチレイテッド・クォーツは不活性であるのに対し、樹脂含浸されたものは青白色蛍光を示す(写真-5a,b)。なかには黄濁蛍光を示す個体もあるが、総じて長波紫外線下ではより強い蛍光を示す。これらのことから、紫外線ランプなどで不自然な蛍光を発するルチレイテッド・クォーツには注意が必要である。
顕微FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)やラマン分光検査などのラボラトリーの技術を用いた分析において、これらの含浸された無色透明材の材質が明らかとなる。特に顕微FT-IRによる検査は、クリベージ部分の含浸物質の検出に対して優れており、クォーツに限らず各種宝石の含浸物質の検出に非常に有効である。 透明材が含浸されたルチレイテッド・クォーツの鑑別書の表記は、以下の通りです。 |