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数年前から加熱処理された“ブラック”ダイヤモンドが宝石市場で広く見られるようになった。これらの識別には宝石顕微鏡を用いた拡大検査が有効であるが、HPHT処理の看破同様、フォト・ルミネッセンス分析が有効である。以下にその背景と宝石学的特徴についてご紹介する。
この“ブラック”ダイヤモンドには1.ナチュラル・カラー、2.照射処理されたもの、3.高温下で加熱処理されたものが知られている。 1990年代後半にはこれまで工業用に使用されていたようなナチュラル・ブラック・ダイヤモンドが前衛的なデザイナーによって無色のダイヤモンドとの組み合わせで利用され始めた。この斬新な手法は瞬く間に他のデザイナーへ広がり、一世を風靡するに至った。このナチュラル・ブラックの色因は内包するグラファイトや鉄鉱物などの黒色インクルージョンであり、地色そのものが黒いわけではない。 さて、ブラック・ダイヤモンドの需要が高まると、素材の十分な確保が必要となり、人為的な照射処理による代用品が現われた。これは主に原子炉で中性子線を照射して得られたもので、外観はブラックであるが、実際には濃緑色である。したがって、強い透過光で(青)緑色を呈する特徴があり、ナチュラル・カラーとの識別は容易である(本誌2000年9月号参照)。 今世紀に入ると、新しいタイプの“ブラック”ダイヤモンドが出現した。すなわち、3.の熱処理ダイヤモンドである。これらはクラリティの著しく低い単結晶や白〜灰色の多結晶の天然ダイヤモンド(写真−2)を還元雰囲気(酸素の乏しい条件)での高温(HT)加熱によって一部をグラファイト化させ黒色化したものである(写真−3)。
フォト・ルミネッセンス(PL)分析がこの高温(HT)加熱処理の看破に有効であることが分かっている。すなわち、HPHT処理の看破と同様に高温加熱の痕跡、または非加熱の特徴が極低温下のPLピークとして検出することができる。 |