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Research Lab. Report 2004.07.28
合成ペリクレース
技術研究室  北脇 裕士
 黄緑色の“カイヤナイト”として御依頼された石を検査した結果、合成ペリクレースであることがわかった。以下に合成ペリクレースの製造の背景と宝石学的特徴についてご紹介する。

Photo-1: 合成ペリクレース(5.87ct、5.38ct)
 ペリクレースはMgOの化学式で表され、岩塩型の結晶構造を有する等軸晶系の鉱物である。{001}に完全な劈開があるため、ギリシャ語の‘peri+klasis’(=周囲の割れ目)にその名前の由来がある。天然ペリクレースはドロマイトの変成鉱物として大理石中、接触帯などに産出する。しかし、原石はほとんどが1ct以下と小粒なため宝石用にカットされることは極めて稀である。これに対して合成ペリクレースは大きなサイズのものが製造され、一部は宝石用にカット・研磨されている。
 マグネシア(MgO)=ペリクレースは高融点を有し、塩基性スラグや熔融金属の侵食に強いことから、粒状物は耐火煉瓦として古くから使用されている。また、単結晶は光学材料、固体レーザー母体または強誘電体薄膜の成長基板として利用されるようになった。
 宝石用に利用された合成ペリクレースの歴史は古く、1969年にはすでにその報告が見られる。当時アメリカでは‘Lavernite’という名称で販売されていたらしい。1990年代に入ると合成ペリクレースに関する文献が海外の宝石学雑誌にいくつか見られるようになる。これらの一つ※によると、オーストラリアでは耐火性マグネシア製造の副産物としてファセッタブルな透明結晶が得られている。この方法では、Queensland,Rock hampton近隣のKunwarara鉱床のマグネサイト(MgCO3)の団塊を破砕・加熱し、その後に電子融解によりインゴットを製造している。このインゴットは2mの直径があり、中心は微細な多結晶であるが、その周囲には幅10cm程度の透明な宝石品質の結晶が得られる。
 さて、今回ご紹介するのはPhoto-1に示した黄緑色透明石である。ご依頼者は天然カイヤナイトとして入手されたようである。屈折率は1.735、比重は3.58で紫外線下では長波・短波共不活性であった。拡大下では特筆すべき内包物は見られなかった。交差偏光下では合成スピネルにみられるタビー消光のような歪み複屈折が観察された。蛍光X線分析ではMgOが99wt%以上で、微量のCaO,Cr2O3,FeOが検出された(Fig-1)。
紫外―可視分光分析では、
しばしばクロム着色の宝石に典型的なスペクトルのパターンが得られた。
Fig-1:合成ペリクレースの蛍光X線分析結果

※文献:G. Brown.(1993) Australian Synthetic Periclase. Australian Gemmologist, November pp265-269


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