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最近、写真に示す“バイカラー”のカット石を鑑別する機会を得た。検査の結果、マシーシェ・タイプのベリルであることが分かった。以下にその特徴をご紹介する。 1917年、ブラジルのミナス・ジェライス州のMaxixe鉱山から濃青色のベリルが発見された。これは自然照射によるナチュラル・カラーと考えられたが、光や熱に対して不安定でMaxixe(マシーシェ)・ベリルと呼ばれた。また、1973年頃、同様のベリルが市場に登場したが、こちらは人工的な照射処理によるものでマシーシェ・タイプと呼ばれた。 両者はともに照射によって形成された着色中心がその色因であるが、オリジナルのマシーシェはNO3にマシーシェ・タイプはCO3-に関連した欠陥によると考えられている。いずれにしてもその色は不安定であり、退色の可能性が問題となる(マシーシェ・ベリルについての詳細は本誌1996年4月号、退色実験については1999年9月号をご参照ください)。 現在、宝石市場においてオリジナルのマシーシェ・ベリルの特徴を有するものに遭遇する機会はほとんどない。マシーシェ・タイプ(照射処理)はしばしば濃青色や緑黄色などのカット石が鑑別に持ち込まれている。 さて、今回ご紹介する表題の石であるが、ご依頼者であるクライムの山本 廣道氏によるとブラジル産のバイカラー・ベリルとしてバンコクで購入されたとのことである。 |
屈折率は1.579〜1.586(0.007)、比重は2.70で一般的なアクワマリンやイエロー・ベリルよりは若干高めである。多色性は明瞭で青色部においては光軸方向から濃青色が観察される。これは通常光が濃色となるマシーシェおよびマシーシェ・タイプの特徴である。一般のアクワマリンは異常光が濃色である。ハンディ・タイプの分光器ではバイカラーの青色部、緑色部の双方にスペクトルの赤色部から黄色部にかけて数本の吸収バンドが認められた。分光光度計で測定するとこれらの吸収バンドは689、644、625、605、588、573nmでマシーシェ・タイプの吸収特性に一致する。長波紫外線下では不活性であったが、短波紫外線下で青色部に一部成長構造に沿った黄緑濁蛍光が観察された。蛍光X線による組成分析を行い、緑色部と青色部でベリルの主元素以外を比較したところ、緑色部ではFeとZnの含有が高く、青色部ではRbとCsの含有が高かった。拡大検査では液体インクルージョンと光軸に平行(おそらく柱面の一つ)な成長線が認められ、青色部と緑色部の境界はこの成長線に調和的であった。 |