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ダイヤモンドのリ・カットとカラー・グレード(第2報)(要旨)
全国宝石学協会  矢野 晴也

 ブリリアント・カットされた石をある特定な形状にリ・カットすると、そのカラー・グレードが変化した事例については、前回の本学会で報告した。
 円形ブリリアント・カットをリ・カットし、そのカット・グレードを改善する試みは一般に広く行われており、これによるカラー・グレードの変化が問題になることが多い。
今回はこれに問題を絞って論ずることとする。
 リ・カットの主要目的は、言うまでもなく、カット・グレードの向上であろう。即ち、下位のグレードをより上位のグレードにする事である。GOOD或いはVERY GOODを最終的にEXCELLENTのプロポーションにする事である。このことにより、当然カット形状、
即ちプロポーションは変化し、その中を通過する光の経路も変化することになる。この事の結果として、当然この石の見かけ上の色は変化することになる。この光の経路長と吸収量の関係は、前回示したごとくランバート・ベールの法則、
T=Ioexp(−μL)
Io:入射光強度、T:透過光強度、L:透過距離、μ:吸収係数で示される。すなわち、ダイヤモンドの色はそれが本来的に持つ光を吸収する性質μとカットにより支配される光の透過距離Lの複合効果である。従ってLとμが分かればこの色や変化の度合いはある程度予測できることになる。前回報告した通りである。通常カラー・グレーデイングを行う際には、パビリオン側からガードル面に平行な方向で観察するが、この場合の光の経路が具体的にリ・カットの前後でどのように変化するのかを求めれば、色の変化度合いの予測がある程度可能となるはずである。

 以上について、具体的な事例につき検討した結果を報告した。
 結論としては以下のとおり

1. 宝石用ダイヤモンドの色はその石の光を吸収する性質と光の透過経路の長さの複合効果である。
2. 従って、リ・カットにより、そのカラー・グレードは変化する可能性がある。
3. 変化の度合いは、定性的にはともかく、定量的にその詳細を言う事は困難である。ただ、通常のカラー・グレードの範囲(E〜J)においてはおよその准測は可能である。
4. 一般論として、ブリリアント・カットを薄くすることでカラー・グレードは改善されるであろう。逆の場合は悪くなるであろう。
5. 参考までに、方−ドル部の汚れは、カラー・グレードに大きく影響を及ぼすであろう。

◎発表内容の詳細は、月刊宝石情報誌「GEMMOLOGY」に順次掲載いたします。


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