>>Topへ戻る >>「Research Lab. Report」タイトルリストへ戻る |
|
|||
2001年後半より日本国内の市場において、高彩度のオレンジ色、ピンク色そして黄色のサファイアが広く見られるようになった。これらの中にはオレンジ・ピンクからピンキッシュ・オレンジの、いわゆる“パパラチャ”のバラエテイ・ネームで知られるサファイアも含まれており、これらは従来のタイプに比較すると一見鮮やかで均一な色調を呈するが、結晶外縁部にはオレンジ色の層が分布し、中心部はほとんどピンク色を示す。また、同じようにカット形状に沿って外縁部に黄色あるいはオレンジ色が分布する、バイオレッド、グリーン、ブルーなどのサファイア、そしてルビーも出現している。このような特異な色分布から、当初これらのコランダムは“表面拡散”処理が疑われたが、その後の調査分析の結果から、外部添加物であるクリソベリルを構成する主元素のBe(ベリリウム)を拡散させる、それまで知られていなかった全く新しい技法であることが判明した。ただし、その着色のメカニズムについては今までいくつかの説が発表されているが、必ずしもすべてが解明されていない。また、このような拡散因子である軽元素Beの検出は一般的な宝石学的手法では不可能であり、SIMSなどのより高度な分析装置を用いることが必要で、その看破の難しさが問題となっている。 |
本研究では、レーザー・アブレーション・システムを用いた誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)を使用してベリリウム(Be)を含めた不純物元素の測定を行い、新技法コランダムの看破の可能性を追求した。 その結果、未加熱および従来の加熱法と新技法のコランダムの間にはベリリウム濃度に明らかな差異が認められ、この分析手法の有効性が確認できた。 今後、その他の軽元素の添加など多様化することが予想される加熱手法の看破や着色メカニズムの解明にLA-ICP-MSによる分析は極めて有効であると考えられる。 ◎発表内容の詳細は、月刊宝石情報誌「GEMMOLOGY」に順次掲載いたします。 |