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今月の鑑別室から 2003.11.11
新鉱物の登録と公表・販売
フォッサマグナミュージアム 宮島 宏
今年9月に認定された新鉱物・東京石(tokyoite)で日本産の新鉱物は全部で93種となりました。新鉱物の認定と登録には、国際鉱物学連合(International Mineralogical Association 略:IMA)の新鉱物・鉱物名委員会(Commission on New Minerals and Mineral Names 略:CNMMN)で審査を受け、委員の3分の2以上の承認を受ける必要があります。新鉱物を発見しても、自分や身内だけで喜んでいるだけではだめなのです。
IMAのCNMMNは世界各国から選出された20数人の委員からなり、新鉱物候補の色々なデータを審査します。提出するデータは化学的性質(化学分析値、実験式、理想式)、外観の特徴と物理学的性質(形、色、透明度、光沢、反射率、劈開、条痕色、硬度、密度、蛍光)、光学的性質(多色性、屈折率、光軸角)、結晶学的性質(結晶系、空間群、格子定数、単位格子中の分子数、X線粉末データ)、既知鉱物との関係、模式標本保管場所、名称とその由来などです。これらのデータを英文で記載したものをCNMMNに送るわけですが、日本では、日本鉱物学会の国内委員会のアドバイスを受けてからIMAのCNMMNに提出するのが普通です。IMAのCNMMNは、その名称からわかるように新鉱物そのものの適不適だけでなく、名称についても審査の対象としています。新鉱物として認められても、提案した名称が適切でないので改善や変更をしなければならないこともあります。
写真のCongratulations(おめでとう)で始まる文書は、私たちが2002年に認可を受けた新鉱物・新潟石(niigataite)の認定書です。その文書には認定後、2年以内に新鉱物の論文を公表する決まりがあることが書かれ、さらに、もし、2年以内に論文が出なければ、新鉱物の認定や名称は無効になると書かれています。私がIMAのCNMMNの委員長のグライス博士から新鉱物の認定書をもらったのは4度目なのですが、以前の3通にはなかった次のような文章が新潟石の認定書には追加されていました。The Commission also strongly disapproves of the practice of providing specimens of new species to mineral dealers prior to the full description of the new species being published.(訳:当委員会は新種の完全な記載論文が公表される以前に、新種の鉱物標本業者への供給の実施も強く不認可とする。)

この文章は、新鉱物の発見にかかわった人が、きちんとした論文が発表される前に新鉱物の標本を業者に渡すことを禁じるという内容です。その後に次の文が続きます。I would ask that you ensure that the first published record of your new mineral is in the scientific literature(訳:私はあなた(方)の新鉱物の最初の公表の記録は科学的な文献においてなされることを確実にするよう頼みたい)つまり、新鉱物が認定され、論文になる前に標本見本市のようなところで公表をするべきでないということをCNMMNは訴えています。新鉱物が発見されたことは、その当事者たちが発表すべきであって、第三者が何らかの方法で新鉱物認定の情報やその名前などを知りえたとしても、それを発見者の承諾なしに公表してしまうのはルール違反です。まして、事前に得た情報で『新鉱物』を採集、買占めたり、『新鉱物』として販売したりするのは完全な違反行為と言えるでしょう。


新潟石(niigataite)の認定書


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