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去る4月22日にバリツキー博士が来協され、ロシアにおける合成水晶の現状や合成アメシストの赤外吸収の研究成果についてご講演いただきました。以下にご報告致します。(photo-1) Dr. Balitzky from Russia visited us at GAAJ on the 22nd April to give a lecture about the result of his study on infrared absorption in synthetic amethysts, as well as about present synthetic quartz in Russia. The contents of the lecture are introduced here.(photo-1) バリツキー博士は現在、ロシア科学アカデミー、応用鉱物研究所の所長をされています。ジェモロジストの間では、世界ではじめて商業的な方法でアメシストを合成された方として著名です。近年ではバイカラー・クォーツやピンク・クォーツの研究・開発で成果を挙げられています。全宝協との関わりも深く、近年では来日された折の講演会・研究会は恒例となりつつあります。 今回はある合成水晶メーカーに技術指導の目的で来日され、そのお忙しい合間をぬって来協いただきました。日程の調整上、一般の方々に聴講いただくことができませんでしたが、AGL会員に呼びかけたところ、8名の参加をいただきました。また、砂川一郎博士にもお忙しい日程を都合してご参加いただき、有益な助言により講演を活性化していただきました。講演の通訳は鉱物科学研究所の堀 秀道先生にお願いしました。堀先生はご存知の通り、石の名探偵として著名な方です。モスクワ大学地質学部に留学されていた経歴をお持ちで、ロシア語に堪能であるばかりでなく、以前からバリツキー博士とも親交を暖めておられます。 今回の特別講演は、合成アメシストの鑑別特徴とされている3543cm-1の赤外吸収の研究成果を中心として、合成バイカラー・クォーツの製法など鑑別業務に携わるものにとっては特に興味深い内容でした。バリツキー博士は講演の途中途中で聴講者の質問にも丁寧に答えていただいたので、あっという間に講演予定の2時間が過ぎてしまった感じです。 以下に実際の講演順序とは多少前後しますが、内容を簡単にまとめてみたいと思います。 |
合成アメシスト |
3543cm-1吸収の研究 |
また、天然の水晶類の赤外分光も精力的に研究されました。例えば、ブルガリア産の熱水鉱床のアメシスト(生成温度200〜300℃)においては単結晶のカラレスおよびアメシスト色部では3543cm-1吸収が認められなかったのに対し、スモーキ色の部分では認められたそうです。筆者の経験においても産地は不明ですが、ある種のスモーキ・クォーツには3543cm-1吸収が検出されたことがあります。 このような研究結果からバリツキー博士はアメシストに見られる3543cm-1吸収は、アメシストのカラー・センタとは直接関係なくSi-OHに関連したものではないかと推定されています。そして重要なことは、天然にも3543cm-1吸収を示すものがあり、また、合成においては3543cm-1吸収を制御することもある程度可能なわけですから、3543cm-1吸収の有無のみでアメシストの鑑別を行うのは極めて危険だと締めくくられました。
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