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ラボにおけるアメシストの鑑別(要旨)
全国宝石学協会  間中 裕二

 合成アメシストが商業ベースで供給され始めた1970年以来、その鑑別はジェモロジストにとって難邁のひとつとなった。往事においては比較的安価な天然アメシストを合成する理由もそれらを鑑別する意義も深く理解されていなかったが、近年では合成アメシストの過剰生産に加え、これらが天然アメシストの原産地において混入されるなど、アメシスト鑑別は世界的な関心ごととなっている。特に旧ソ連が崩壊し、市場経済が発達するにつれ、ロシアの結晶育成技術が輸出用のジュエリー製造に向けられるようになってからは、大量供給に伴い合成アメシス
ト原石の価格も急落し、さらには中国製との競合の結果、その価格はベルヌイ合成品並に下落しており、必然的にアメシスト鑑別の重要性は高まっている。
 天然アメシストと合成アメシストの鑑別法については多くの研究者によってさまざまな方法が公表され実践されてきた。アメシストは天然も合成も化学組成および結晶構造は同一であるため屈折率や比重などの特性値は鑑別上有効な指標にはなり得ない。
 本報告では宝石鑑別ラボで標準的に採用されているアメシスト鑑別の手法と間題点について言及する。

1. 内包物の観察
  ゲーサイトは天然アメシストの典型的な固体包有物として広く知られている。パン層状インクルージョンは合成 起源を暗示しており、種結晶の存在は決定的な証拠となる。液体インクルージョンは合成アメシストには稀にし か見られず、ブラジル双晶に関連したタイガー・ストライプまたはゼブラ・ストライプと呼ばれる形状を示すものは 天然起源と考えられる。

2. カラー・ゾーニングの観察
  カラー・ゾーニングはいうまでもなく結晶成長における形態変化に対応するものであり、天然と合成の結晶形態 の理解が重要である。天然アメシストでは通常、r面あるいはz面に対応する2方向以上のパープルもしくはバイ オレットと無色のカラー・ゾーニングが観察され、その境界もきわめて直線的かつ明瞭である。これに対し、量産 タイプの合成アメシストは通常z面に平行な一方向でパープル系の明暗のカラー・ゾーニングを示す。 また、Z 面上の微斜面の形態に対応する紡錘形のカラー・ゾーニングは合成起源を示唆する。

3. 双晶の有無
  天然アメシストはほとんどのものがブラジル双晶をしており、合成アメシストは基本的に双晶していない。したが って、偏光器などを用いて交差偏光下でアメシストを光軸方向から観察し、ブリュースター・フリンジが観察され れば天然と考えられ、干渉による単純なカラー・リングの場合は合成の可能性が高い。

4. 赤外分光分析
  アメシストにおいては3543cm-1の吸収は合成の特徴と考えられている。我々のラボにおいてこれまで検査した 100以上の合成アメシストのうちおよそ80%以上に明瞭な3543cm-1吸収が認められている。


◎発表内容の詳細は月刊宝石情報誌「GEMMOLOGY」に掲載いたします。


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