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今月の鑑別室から 2002.10.25
天然フォルステライトと合成フォルステライト
<Natural Forsterite and Synthetic Forsterite>
技術研究室  北脇 裕士
希少宝石の天然フォルステライトと近年、宝石用に供給されている合成フォルステライトの宝石学的特徴について報告する。
Gemmological features of natural forsterite, one of rare gemstones, and synthetic forsterite that has been marketed for gem use are reported this month.

 フォルステライト(Forsterite)はオリビン・グループの端成分鉱物で
Mg2SiO4の化学式で表される。その名称は英国の鉱物コレクターJacob Forsterに因んでいる。
オリビン鉱物は多くの固溶体が知られているが、中でもフォルステライトとファヤライト(Fe2SiO4)は連続固溶体を形成し、その中間組成で黄緑色の結晶はペリドートと呼ばれている。ペリドートは8月の誕生石にもなっており、一般にも良く知られているが、フォルステライトは宝石としては馴染みが薄い。自然界においては、Mgは通常Feと置換し易く、端成分もしくは端成分に近い化学組成をもつフォルステライトは希産で、超塩基性岩や熱変成を蒙った苦灰岩質石灰岩中に産する。
PHOTO-1は最近、鑑別する機会を得た天然フォルステライトで、ご依頼者によるとスリランカ産とのことである。屈折率は1.635-1.670 (β:1.650)、複屈折量は0.035であった。比重は3.29で、紫外線下では不活性であった。拡大下では微細な針状inc.が方向性をもって配列した様子が観察された(PHOTO-2)。蛍光X線による組成分析では、主要元素のMg、Si以外に相当量のFeと微量のCaおよびMnが検出された。

さて、オリビン・グループの結晶は耐熱材、絶縁材およびレーザー用に研究・利用されている。中でも、フォルステライトの単結晶は近赤外用のレーザー結晶として結晶引き上げ法で高品質・大型の結晶が合成されている。
PHOTO-3はタンザニオンの名称でプロモートされている合成フォルステライトである。
これはおそらくロシアで宝石用に合成されたもので、その名称から明らかにタンザナイトを模倣したものである。タンザニオンの屈折率、複屈折量および比重は天然フォルステライトと同じである。長波紫外線下では弱いオレンジ〜イエロー、短波紫外線下ではグリーニッシュ・イエローの蛍光を発する。また、青、紫の顕著な多色性が認められる。ハンディ・タイプの分光器では490nm、520nmおよび580nmに吸収バンドが認められる。拡大下では点状および短い針状のインクルージョンが観察された。蛍光X線による組成分析では、主要元素のMg、Si以外に相当量のCoと微量のVが検出された。



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