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今月の鑑別室から 2002.09.25
天然ヘミモーファイトと天然スミソナイト
<Natural Hemimorphite and Natural Smithsonite>
技術研究室  北脇 裕士
 最近、PHOTO-1に示すブルーの天然ヘミモーファイトを目にする機会が多い。一部でスミソナイトと混同されているようなので両者の特徴についてご紹介する。
We have increasingly encountered natural blue hemimorphites shown in the photo-1
recently. Some of them seem to be confused with smithsonites, and this month we are
introducing the characteristics of these two stones.

 ヘミモーファイト(hemimorphite)の結晶は明瞭に異極像を示す(結晶の両端で形状が異なる:hemiは半分の意味)ことからその名称が与えられ、和名を異極鉱という。
Zn4Si2O7(OH)・H2Oの化学式で表される斜方晶系の鉱物で、硬度が4.5〜5と低く、耐久性にはやや難ありであるが、色や透明度の美しい結晶はしばしば宝石用に研磨される。カラレス、ブルー、イエロー、ブラウンなどが知られているが、最近、よく見かけるのはブルーのカボション・カットされたものである。
 屈折率は1.61−1.64程度、複屈折量は0.022である。比重は3.4〜3.5。紫外線下では不活性でスペクトルにもさしたる特徴はみられない。拡大下では繊維状の結晶が縞状構造を示すのが特徴である(PHOTO−2)。


 スミソナイト(Smithsonite)は米国ワシントンにあるスミソニアン協会の創設に寄与した鉱物学者のJ.Smithsonに因んで命名され、和名はその組成から菱亜鉛鉱と呼ばれている。スミソナイトは化学式がZnCO3で表される三方晶系の鉱物で、カルサイトとは同形である。したがって、硬度は4〜4.5と低くこちらも耐久性という観点からは難がある。
しかし、ブルー、ピンク、グリーン、イエローなど色の美しいものはカボション・カット、まれにはファセット・カットが施されることがある(PHOTO−3)。
 屈折率は1.62−1.84程度で複屈折量は0.037と大きい。比重は4.3〜4.5である。

 両者の識別には上記の特性から比重検査が有効である。セッティングされて検査が制約される時は、元素分析や、FTIRによる赤外スペクトル解析が確実な情報を提供してくれるであろう。



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