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今月の鑑別室から 2002.04.25
ジェイダイト類似石2種
<Two Varieties of Jadeite Simulants>
技術研究室  北脇 裕士
 最近、ジェイダイトの類似石を2種、研究用に入手した。これらは分析の結果、ハイドロ・グロッシュラー・ガーネットとアノ−サイトであることがわかった。
We obtained two types of jadeite simulants for study, which revealed them as a hydrogrossular garnet and an anorthite.
 ジェイダイトに良く似た外観をもつ緑色半透明の天然石、そして人工製品は数多く、しばしば○○ヒスイや○○ジェード等のフォールス・ネームやコマーシャル・ネームで呼ばれている(ジェイダイトの主な類似石については“宝石 小宇宙を科学する
II”を参照して下さい)。ジェイダイト類似石の多くは岩石であり、これらの識別には屈折率や比重をはじめとする諸特性の他に個々の組織や構造の観察が重要である。また、一般鑑別では識別が困難でラボラトリーの技術が必要となるケースも多い。
 さて、今回は新しく研究用に入手したジェイダイトの類似石を2種ご紹介する。1番目はPHOTO-1に示したもので、一見、色の不均一なジェイダイトのようである。屈折率はスポット法でおよそ1.73、比重は静水重量法にて3.54程度であった。カラー・フィルターでは緑色部が赤色を示した。拡大下では黒色粒状の内包物(おそらくマグネタイト)が認められた(PHOTO-2)。
ここまで得られた情報からハイドロ・グロッシュラー・ガーネットであると考えられたが、白色部の透明感が高く、一般的なタイプと見かけが異なるため、蛍光X線分析とラマン分光分析を行った。その結果、緑色部、白色部ともにハイドロ・グロッシュラー・ガーネットであることが確認できた。ハイドロ・グロッシュラー・ガーネットはトランスバール・ジェードあるいは南アひすいというフォールス・ネームで呼ばれることがあり、ジェイダイト類似石としてその名称は知られているが、種々の外観があることを十分に理解しておかなくてはならない。
2番目はPHOTO-3に示したもので、これも色の不均一なジェイダイトのようである。屈折率はスポット法でおよそ1.58、比重は静水重量法にて2.76程度であった。カラー・フィルターでは緑色部が赤色を示した。拡大下では緑色結晶は六角形状の形態を示している(PHOTO-4)。蛍光X線分析とラマン分光分析の結果、主体は斜長石の一種でアノ−サイト:CaAlSiOであることがわかった。また緑色結晶はグロッシュラー・ガーネット:CaAl(SiO)であった。


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