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今月の鑑別室から 2001.12.09
合成スモーキ・クォーツ
<Synthetic Smoky Quartz>
技術研究室  北脇 裕士
最近、研究用に合成スモーキ・クォーツを3pc入手し検査した。その宝石学的特徴について報告する。
Three pieces of synthetic quartz were obtained for study and we examined them recently. Their gemmological features are reported here.

ロック・クリスタル、アメシスト、シトリンなどの水晶類は比較的安価な宝石素材として根強い人気がある。しかし、その鑑別となると一筋縄ではいかない。近年では宝飾用合成水晶類の過剰生産に加え、これらが天然石の原産地において混入されるなど、水晶類の鑑別は世界的な関心事となっている。特に旧ソ連が崩壊し、ロシアの結晶育成技術が輸出用のジェエリー製造に向けられるようになってからは合成原石の価格も急落し、日本国内においては比較的安価な宝飾品にも合成水晶類が普通に使用されるようになっている。

合成水晶類および鑑別関連の詳細については本誌既報の以下の記事を参照されたい。
・バリツキー博士を囲んで 1997年09月号
・合成バイカラー・クォーツ 1999年05月号
・合成ロック・クリスタルの丸玉 2000年02月号
・ロシアの合成石・処理石の現状 2000年11月号
・3543cm−1吸収を示す天然アメシスト 2001年09月号
さて、今回ご紹介するのは合成スモーキ・クォーツである。写真-1に示した3pcは昨年9月のバンコク・ジュエリー・ショーでロシア製の合成石を扱う業者から研究用に購入したものである。重量はそれぞれおよそ6ctである。合成スモーキ・クォーツは合成ロック・クリスタルをγ線照射して得ることができる。文献などでは1960年代から市販されていることになっているが、実際の鑑別ではこれまでほとんど見かけることは無かった。鑑別の特徴はc軸方向に伸長した“流れ模様”(写真-2)と光軸方向から観察されるコブル構造に関連する色むら(写真-3)である。また、FTIRによる分析では天然に見られる3595cm−1等の吸収が認められない。


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