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今月の鑑別室から 2001.10.01
天然プレーナイト
<Natural Prehnite>
技術研究室  北脇 裕士
最近、写真-1に示す透明感のある天然プレーナイトを鑑別する機会を得た。以下にこの石の宝石学的特徴について報告する。
Recently we had an opportunity to identify a natural prehnite which has high transparency as shown in the Photo-1. The gemmological features are reported here.
プレーナイトの名称はこれを最初に発見したとされるオランダのHendrik von Prehnに因んでいる。南アフリカの喜望峰で産出したこの石に対してA.G.Wernerが1789年に命名したとされている。
 和名のぶどう石は明治の鉱物学者がその産出形態から命名している。この石は単結晶として産出することはまれで、たいてい「ぶどう状」の集合体として産出する(写真-2)。淡い黄緑色のものはたしかにマスカットの房に似ている。
 プレーナイトの化学式はCa2Al[AlSiO10](OH)で表される。[ ]外のAlはFe3+にある程度置換され、Fe3+の含有量が高いほど屈折率と比重が高くなる。古い文献で斜方晶系と記載されているが、近年は斜方晶系または単斜晶系とされている。Al,Si,Oから成るC軸に垂直なシート状の構造をもっており、そのため底面に平行な明瞭な劈開を有している。しかし、単結晶が宝石用にカットされることはきわめて稀で、たいていは房状あるいは繊維状の集合体がカボション・カットや彫刻にされているため、劈開が問題となることはない。また、硬度も6〜6.5と層状珪酸塩鉱物としては高い方である。
 プレーナイトは玄武岩、粗粒玄武岩などの空隙にぶどう状の集合をなす他、ぶどう石―パンペリー石相に属する苦鉄質岩起源の広域変成岩の主成分鉱物をなす。その他にもある種のスカルン、花崗岩質ぺグマタイト、比較的高温生成の熱水鉱脈など、幅広い産状をもつといわれている。
 宝石用に供されるプレーナイトは黄色、緑黄色、無色などがあり、緑色の半透明石はジェイダイトの類似石としている文献も多い。主な産地は中国、アメリカ、フランス、カナダ、南アフリカおよびオーストラリアなどである。

 プレーナイトの宝石学的特性は以下の通りである。
屈折率: α=1.611〜1.632
β=1.615〜1.642
γ=1.632〜1.665
たいていは1.63付近にボーっとしたシャドー・エッジが見られる。
複屈折量: 0.021〜0.033
光学性: 二軸性(+)
2Vz=65〜69°
比重: 2.8〜3.0
硬度: 6〜6.5


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