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今月の鑑別室から 2001.3.1
カナリー・トルマリン
<Canary Tourmaline>
カナリー・トルマリンという名称でプロモートされているイエロー・トルマリンを検査する機会を得た。分析の結果、これらはMnを多量に含有するエルバイトであることがわかった。
We had a chance to test several pieces of yellow tourmaline that have been promoted as “Canary Tourmaline”. Our analysis revealed that these stones are an elbaite, which are rich in manganese.

トルマリンは宝石素材の中でも最もカラー・バリエーションの豊富な石である。「ない色はない」といわれるほどで、その多彩な色調が宝石トルマリンの大きな魅力となっている。
 トルマリンは鉱物学的に分類すると、現在13種の端成分が認知されている(うち1種は未命名)。しかし、宝石学では単に色名を冠して“天然〇〇トルマリン”と呼ぶのが一般的である。また、ルベライトやインディゴライトのように、ある色調に対して伝統的な固有の呼称がなされる場合もある。
 さて、最近になって“カナリー・トルマリン”という名称でプロモートされている彩度の高いイエロー・トルマリンを検査する機会を得た(写真1および2)。このような色調はトルマリンの変種の中でも比較的希産で、ディーラーの話によると、今回ご紹介するものは、モザンビークで産出したものらしい。

 一般的な鑑別検査においては、これらのトルマリンの特性はすべて通常の宝石トルマリンの範ちゅうにあつた。
 蛍光]線による組成分析を行ったところ、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)およびナトリウム(Na)のほかに多量のマンガン(Mn)が検出された。このような化学組成を有するトルマリンは、鉱物学的にはmanganoan elbaite (Mnを多量に含有するエルバイト)と解釈されている。
 Mnエルバイトの最初の報告はマダガスカルのTsilaisina産のもので、1929年にTsilaisiteというおよそMnを20wt.%含む理論上の新しいトルマリンの端成分の名称が提案された。しかし、この端成分を少なくとも50%以上有する天然のトルマリンが発見されていないことから、Tsilaisiteという名称はまだ公式には認められていない。その後、宝石質のMnエルバイトが1980年代中頃にザンビアから発見されている。ザンビア産のものは色調を改善するために加熱されているが、今回ご紹介したモザンビーク産のカナリー・トルマリンは、ディーラーによると、“てり”をよくするために加熱されることもあるとのことである。

注)ここでご紹介したカナリー・トルマリンは、鑑別書上では天然イエロー・トルマリンと表記されます。


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