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宝石学会(日本)講演会から ロシアの合成石・処理石の現状 2000年 バリツキー博士特別講演 |
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去る7月22日(土)と30日(日)の両日、技術研究室にパリツキー博士を迎え、同セミナー・ルームにおいて特別講演を開催しました。ジェモロジストにとって極めて興味深い内容でしたので、以下にご報告いたします。 |
<アレキサンドライト> 合成アレキサンドライトはCZ法で製造されている。融点が高いので、イリジウムやプラチナ製のるつぼが用いられており、このため金属インクルージョンが混入している。 少量ではあるがフラックス法でも製造されており、これらは鑑別が困難である。また、聞くところによると、熱水法でも合成されているらしい。 <スピネル> 合成スピネルは古くからベルヌイ法で製造されているが、これら識別が容易である。近年はフラッ法によっても製造されており、こちらは識別が困難である。特にフラックス合成レッド・スピネルは、天然との鑑別が極めて困難である。以前は天然にはZnが含まれるが合成には含まれないといわれたが、現在は合成にもZnを添加している。フラックス合成レッド・スピネルが天然のアフガニスタン産として販売されたら困るのではないだろうか。しばしばそのようなことが行われている。 <オパール> 近年では新しい技術がオパールの合成に用いられており、これらは天然と何ら遜色のないものに仕上がっている。ホワイト・オパール(写真参照)は安定化のためにポリマーが含浸されている。このため、こすった時の臭いや赤外分光で鑑別することが可能である。しかし、ブラック・オパール(写真参照)はギルソン製のように充填剤としてZr酸化物を用いていないので識別が困難であろう。 <水晶類> ロシアでは工業用途として大型の合成水晶が製造されている。携帯電話用として日本からのオーダーも受けている。プリズム用や遠距離ラジオ通信用として20kg以上の結晶が製造されている。 着色した水晶類や各色の組み合わせによるマルチカラー・タイプも合成されている。 P(リン)を用いたピンク色(写真参照)が合成中最も高価である。 これは腐食性の強い弗化物溶液を使用するため、小さなオートクレーブで一度に少量しか製造できないためである。最近はNiを用いた新しいタイプの合成ローズ・クォーツも製造されている。 合成アメシストは、量産タイプのものは基本的には1方向のカラー・ゾーニングとブラジル双晶の欠如により識別が容易である。しかし、結晶の端部には2方向以上のカラー・ゾーニングが見られ、また種結晶付近からブラジル双晶が発生することもあるので注意が必要。特殊なタイプとしてr面を種に合成されたものや、両錐型の晶癖を持つ結晶は識別が極めて困難であろう。 マルチ・カラー・タイプの代表としてアメトリンがある。天然ではボリビア産のものが有名だが、合成のアメトリン・タイプ(写真参照)がボリビアで売られているらしい。天然ではr領域がアメシスト色でz領域がシトリン色であるが、合成ではrおよびz領域が紫色で、底面領域が黄色である。 |