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宝石学会(日本)講演会から ジェイダイトに関する諸問題 全宝協技術研究室 福島 秀明 |
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■ はじめに |
このタイプはEPMAの分析結果では、クロムを含むジェイダイト、クロムを含むオンファサイト、そしてクロムをほとんど含まないジェイダイトが基本となっており、肉眼で鮮緑色に見える部分はクロムを含むオンファサイトとクロムを含むジェイダイトより構成されていた。また、金属光沢を示す鉱物はクロマイトであった【fig−12】。このタイプの中には、部分的に無色の他種鉱物を含むものもある【fig−13】。斜光照明で観察すると、明らかに異なる光沢を示し【fig−14】、実際に屈折率を測定したところ約1.52の低い値が得られた。 蛍光X線分析では無色部分にはmol比で約70%のSiOの含有が見られ、またNa、Alとの組成比から考えると、おそらくアルバイトと考えられる。 ■ その他のヒスイ様緑色岩石 1.マウシットシット(Maw sit-sit) 数年前から、ジェイダイトの類似石として市場に出回っているが、緑色、黒色、白色の斑状又は脈状の組織が特徴的である【fig−4】。 X線粉末回析の結果、緑色部はコスモクロア+エッケルマナイト+アルバイト。黒色部はエッケルマナイト+アルバイト、白色部はアルバイトであった。 .2.ブラック・ジェード 肉眼では黒色に見えるが【fig−5】、強い光を透過すると、鮮緑色と黒色部から構成されていることが分かる【fig−15】。 蛍光X線分析の結果、Alに乏しく、その他Si、Cr、Fe、Na、Mgを含有することが確認された。 X線粉末回析ではコスモクロアとエッケルマナイトやエデナイトなどの角閃石類の回折ピークが得られた。 SEM像からは微細な柱状結晶(明部)の間に別の鉱物(暗部)が存在していることがわかる【fig−16】。EPMAによって、この石の大部分を占める明るい部分はコスモクロアで、その間の暗部はエッケルマナイトであることが明らかにされた。また、部分的にコスモクロアの放射状集合体の中心部にクロム・スピネルが存在していた【fig−17】。 ■ まとめ EPMA分析によってロウタイプのジェイダイトでは、Mg、Caは固容体として存在しているのではなく、ジェイダイトよりなる部分とオンファサイトよりなる部分にそれぞれ分かれて存在していることが判った。このことから、ごく一般的な緑色ジェイダイトにおいてもオンファサイトを伴っている可能性は一層高く、宝石としての「ジェイダイト」は、ジェイダイト(ヒスイ輝石)とオンファサイト(オンファス輝石)から構成される岩石と考えるのが妥当と思われる。さらにこれらに近接する各変種の区分についても再考が求められるかもしれない。また、最近マーケットに流通している不均一な外観のジェイダイトや他種鉱物で構成される暗緑色岩石についても、構造および組成分析の結果から、適正な呼称を決定することが求められる。 |