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宝石学会(日本)講演会から ダイヤモンドのハート・キューピット・パターン続報 2000年 宝石学会(日本) 講演 |
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1. まえおき |
三次元的なシンメトリーの崩れは、主としてガードル厚さの不ぞろいにより生ずる。ガードルは本来、均等な波を打つべきであるが、現実には不規則な場合が多い。図3のように、BB面の交線部がδ%厚くなった場合を考える。この場合の影響は、まずBB面の角度が変化することであり、次に角度の方位が変化することである。すなわち、三次元的なシンメトリーの乱れである。ここで重要なのは後者である。相対する面との方位がずれることになり、光の反射方向が変化することになるからである。この場合の角度方位は図3から計算可能であり、δ=1%ならば、μ=7.9°(パビリオン角度40.75°笹目点78%の場合)となり、δ=−1%ならば、μ=14.5°と計算される。 またこのときのBB面角度は、それぞれ41.40、42.50となり、平常の場合の41.90に対し0.50程度減少したり増加したりすることになる。当然のこととしてH.C.が様々な変化を示すことになる。 4.μの変化とハート・パターン μが変化する理由と、その変化による影響は上に述べたとおりである。 これが実際にどのようにハート形状の変化につながるのかを示したのが図4である。図のようにμが増大する、すなわちBB面の交線部のガードル厚さが薄くなると、ハート形状は著しく小さくなる。先に示した写真は、まさにこの例であったわけである。 これらの形状については、先に報告した計算式(シンメトリーが完全な場合)の方位の数値、11.250の代わりに、(22.50−μ°)を用いれば計算できる。この計算結果と図形は表1と図4のとおりである。 5.V字パターンの変化 ハートの先端部のV字パターンは、この出現に関与する面がハート・パターンとは逆の関係にある。ハートの場合には、光はパビリオン面から入射してBB面から出てくるのに対し、V字には変化を及ぼさないことになる。ただ、V字が不ぞろいなパターンを示していることが多い。これは、今回主として取り上げたガードル部分の不ぞろいによるよりも、むしろパビリオン面の角度とその方位に原因があると思われる。今後の研究課題としたい。 6.まとめ ハート・キューピット・パターンは、プロポーションとシンメトリーを端的に表現する映像である。現在のカット・グレーディング方式で最上位にランクされているエクセレント・カットは、このハート・パターンとは必ずしもリニアーには対応しない。片や二次元的な見方の結果であり、片や三次元的なプロポーションの反映であるからである。またハート・パターンが見られても、そのプロポーションが現行のエクセレント基準から外れている場合があるからである。 このことから、ハート・キューピット・パターンをカット・グレーディングの一要素として取り入れ、現行のエクセレント・カットにおいては、その必要条件として考えてもいいのではないかと考える。 |