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宝石学会(日本)講演会から
ダイヤモンドにおけるHPHT処理の現状
     全宝協技術研究室  北脇 裕士

 本報告は平成12年度宝石学会(日本)において一般講演に先立って行われたシンポジウム「ダイヤモンドの合成と処理の現状」の中で講演した内容を要約したものである。

◆はじめに
 昨年の宝石業界における最も大きな話題の一つとして、GE POLダイヤモンドが挙げられる。
 また昨年末からNovaダイヤモンドと呼ばれる新しいダイヤモンドのカラー処理が話題になっている。本報告においてはこれらのHPHT処理の現状とその背景について概観し、これまでの観察例を通してその鑑別特徴を紹介する。

背景
 宝飾用天然ダイヤモンドの品質改善を目的としたHPHT処理が話題となっているが、処理そのものの研究はかなり以前から行われている。1970年代後半にはGEやデビアスの工業用ダイヤモンド部門においてそれぞれ独自にHPHT処理関連の特許が取得されている。
1994年にはGEによるCVD合成ダイヤモンドのHPHT処理を用いた“靭性の改善”および“結晶欠陥の軽減”等に関する一連の米国特許が出願され受理されている。この1970年代末に取得された特許の満期や数年前からの工業用ダイヤモンドにおけるHPHT処理の研究が今回の一連の話題の布石になっていると考えられる。

≪GE POLダイヤモンド≫
 これは
Iaタイプのブラウン系天然ダイヤモンドを高温高圧(HPHT)条件下で処理し、ほぼ無色にしたものである。昨年の3月にLKIにより公表され、6月以降販売が開始されている。
鑑別特徴として以下のポイントが挙げられる。

◆一般鑑別
◇蛍光検査 ・無蛍光〜蛍光弱
◇拡大検査 ・GE POLの刻印・グレイニング
・ハローを伴う黒色インクルージョン
◇偏光検査 ・タタミ・パターン
◇その他 ・型のチェック
(紫外線透過性等)◆ラボの技術
◇FTIR ・型のチェック
◇ラマン分光・NVセンタの解析

≪Novaダイヤモンド≫
Iaタイプのブラウン系天然ダイヤモンドをHPHT処理によってグリーニッシュ・イエローに変化させたものである。昨年の12月に公表され、今年の2月以降インターネット販売が開始されている。 

鑑別特徴として以下のポイントが挙げられる。
◆一般鑑別
◇目視・鮮緑黄色
◇蛍光検査・イエロー〜グリーニッシュ・イエロー
◇拡大検査・
NOVADIAMONDS EGLとシリアルNo.の刻印
グレイニング(黄色〜褐色)
ハローを伴う黒色インクルージョン
・クリベージに黒色ステイン
◇偏光検査・八面体面に平行な干渉色を伴う歪複屈折◆ラボの技術
◇FTIR・
IaA<IaB
◇分光分析・N3,H4,H3,H2
    
≪問題点および今後の課題≫
◆GE POLダイヤモンド
 当初、GEの技術者によってGE POLダイヤモンドは永久に看破不可能であるとされていた。しかし、最近になって看破不可能なものはGE POL全体の40〜50%程度と修正されている。今後、より精度の高い看破法の確立が急務である。

◆Novaダイヤモンド
 現在、Novaプロセスによるダイヤモンドは先に示した一般鑑別および分光分析によるH2センタの検出により看破可能である。しかし、中にはH2センタが非検出のものがあり、これらの看破法の確立が必要である。

◆その他の色変化
 HPHT処理による別の色変化についての研究を進めて行く必要がある。GEは最近、レッド、ブルー、その他のファンシー・カラーへの変化を報告している。

全宝協技術研究室では昨年来、無機材質研究所の神田久生博士らと共にHPHT処理に関する共同研究を行っているが、今後も継続してここに示した課題についてさらなる研究を行う予定である。


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