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今月の鑑別室から 2000.12.1
処理グリーン・ダイヤモンド
技術研究室  北脇 裕士
 最近、写真ー1に示すような明るい色調の処理グリーン・ダイヤモンドを鑑別する機会が増加している。以下に、その宝石学的特徴について報告する。
 カラー・ダイヤモンドは色の評価をする以前に、その色の起源を鑑別する必要がある。近年ではナチュラル・カラーと視覚的には区別がつかない処理や合成が存在し、宝石市場に流通している。
 グリーン系のダイヤモンドもその例外ではなく、希少性の高いナチュラル・グリーンの代用として、古くから照射処理が行われてきた(照射処理の歴史については本誌:ダイヤモンドのすべて<34> 39-40参照)。また、近年ではグリーンの合成ダイヤモンドも製造されている
(合成ダイヤモンドの色については本誌:ダイヤモンドのすべて<17> 202-204、<18> 230-232参照)。
 さて、今回ご紹介する処理グリーンは一見してナチュラル・グリーンの色調とは異なるが、従来の照射処理グリーンとも異なる。ナチュラル・グリーンはたいてい色調が淡く、このような濃色のものはおそらくあり得ない。一般的な照射処理グリーンはやや彩度の低い暗い感じのものが多い。
 拡大下では特に際立ったインクルージョンは認められないが、特徴的なカラー・ゾーニングが認められる。この処理グリーンのほとんどのものにブラウンのインターナル・グレイニングが見られる。これは処理の原材にアーガイル系の天然ブラウン・ダイヤモンドを用いていることを示唆している。また、キューレットおよびガードル周辺にグリーンの色溜まりが観察される(写真−2)
これはカットしてからの着色を示唆しており、すなわち処理の証拠となる。このような表層付近の着色は電子線照射の特徴でもある。
 長波紫外線下では個体差はあるものの、多少濁りのあるグリーンの蛍光を発する(写真−3)。これは後述するようにH3センタに由来する。 紫外−可視分光分析においては照射の痕跡となるGR1センタと照射後のアニールに由来するH3およびH4センタが検出される。このH3センタに伴う青色部の吸収帯がGR1センタに付随して特徴的な彩度の高いグリーンを生み出している。
 
 最近流通量が増加してきた彩度の高い処理グリーンは、アーガイル系の天然ブラウン・ダイヤモンドを原材にして電子線照射とその後のアニール(電子線照射時の加熱による可能性もある)を組み合わせた処理によると考えられる。
これらの処理ダイヤモンドの鑑別結果は以下の通りです。

鑑別結果:天然ダイヤモンド(処理石)/照射による色の改変を認む


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