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今月の鑑別室から 2000.11.1
新タイプのレーザー・プロセス(KMプロセス)について
◇従来のレーザー・ドリル・プロセスは、ダイヤモンド内部の黒色物質(ダーク・インクルージョン)を除去するために細い円筒形の穴(ドリル・ホール)を開けていました。ドリル・ホールはクラウン側から垂直方向に開けられるので、ガードル方向から管状のドリル・ホールが明瞭に観察することができます【写真-1】【写真-2】
新しいレーザー・プロセス(以下、KMプロセスと記す)では、ドリル・ホールを形成させず、レーザー光線によってダーク・インクルージョンに接する部分にクリベージを作り、それを表面まで発達させます。表面に達した割れから強酸が入り込み、数日間のボイリングを経て内部の黒色物質が除去されます。
KMプロセスの特徴は、インクルージョンから表面に向けて発達する割れの形態です。噴水状【写真-3】、網目状【写真-4】、ムカデ状【写真-5】などが典型的な形で、インクルージョンの位置と結晶方位によって幾つかのバリエーションがあるようです。部分的に黒色物質が見られますが、酸で取りきれなかった包有物と思われます。また、結晶が膨張したようにも見えるでしょう【写真-6】
ただし、従来のドリル・ホールを伴わないために、ダイヤモンド内部のインクルージョンから表面に達する割れが、天然のものか人工的なものかを通常のグレード作業で完全に判別することは、極めて困難な状況です。現在は、顕微鏡観察以外にラボラトリー手段として、微分干渉顕微鏡を用いてクリベージ開口部付近の表面研磨状態を観察することが看破の一助となっています。
KMプロセスは、元々のインクルージョンの他に新たなクリベージを発生させるため、クラリティー・グレードの大きな改善はほとんど期待できず、場合によってはグレードが落ちることがあるかもしれません。
◇平成12年6月にお知らせいたしましたように、KMプロセスの表記および取り扱いについてAGL/JJA合同委員会において協議を進めてまいりましたが、この度、下記のとおり決定に至りましたのでお知らせいたします。
(株)全国宝石学協会といたしましては、正式決定までの暫定措置として「内部レーザー・プロセスについては表示せず」のコメントをソーティング・メモおよびレポートのコメント欄に表記してまいりましたが、平成12年12月1日(金)発行分より下記表現に変更させていただきます。
既に暫定表示で発行済のソーティング・メモをお持ちのお客様で、グレーディング・レポートに移行される場合には、下記の表記内容に変更させていただきます。
何卒ご理解をいただき、今後とも一層のお引き立てを賜りますよう、ここにお願い申し上げます。

平成12年11月20日
(株)全国宝石学協会

KMプロセスの表記

【グレーディング・レポート】

備  考:内部レーザー・プロセスの明らかな特徴を認む

【鑑別書】
鑑別結果:天然ダイヤモンド
備  考:内部レーザー・プロセスの明らかな特徴を認む

【ダイヤモンド・ソーティング・メモ】
 備  考:KMプロセス  

【カラーストン・ソーティング・メモ】
鑑別結果:天然ダイヤモンド
備  考:KMプロセス
写真-1 写真-2 写真-3
写真-4 写真-5 写真-6


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