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今月の鑑別室から 2000.9.1
ブラック・ダイヤモンド
技術研究室  北脇 裕士
 最近、ブラック・ダイヤモンドを鑑別する機会が増加している。これらにはナチュラル・カラーと処理によるものがあり(写真−1)、その識別が重要である。

 昨年来、小粒のブラック・ダイヤモンド複数個を素材にしたリングやペンダントの鑑別依頼が増加している。ブラック・ダイヤモンドには他に類を見ない特有の光沢があり、人気を博しているようである。
さて、このブラック・カラーであるが、天然ダイヤモンドにおいて地色そのものが完全な黒色というケースはほとんどない。たいてい淡褐色〜淡黄色のボディ・カラーに内包する黒色インクルージョンが反映したものである。インクルージョンは粒状〜不定形のグラファイトや針状の硫化鉱物などである(写真−2)。目視的には均一なブラックでも通常、インクルージョンの分布に偏りがあるため強い透過光下では不規則な色むらが観察される。また、多数のインクルージョンを介在するため研磨が困難でファセット・エッジがチップしていたり、しばしばポリッシングやドラッグ・ラインが見られる。 一方、ブラック・カラーには照射処理によるものがある。処理によりカラーやクラリティ・グレードの低さを隠すことも可能となるため、その種の石を原材にしていると考えられる。照射によるブラックはGR1吸収に由来する。
これは炭素原子のあるものが、正規の格子位置からはずれてホールが残ることによって生じる欠陥で、可視光の赤色部〜黄色部に幅広い吸収帯をつくる。結果的にダイヤモンドは青〜緑色に着色するが、濃色の場合はブラックに見える。したがって、照射によるブラックはファイバー光源などの強い光を透過させるとほとんどが青〜緑色に見える(写真−3)
 処理はおそらく原子炉を用いた中性子線照射と考えられるが、これまで鑑別依頼を頂いて検査したものについて残留放射能が検出された例はない。
ブラック・ダイヤモンドの鑑別結果は以下の通りです。

◆ナチュラル
鑑別結果:天然ダイヤモンド
色相透明度:黒色不(半)透明石

◆処理
鑑別結果:天然ダイヤモンド(処理石)/照射による色の改変を認む


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